日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)の退任が濃厚となった。日産の指名委員会が後任を選定し、来週にも発表する見通しだ。業績不振が続く中、内田氏の経営責任を明確化し、新体制で再建を加速させる狙いがある。
日産は2月、ホンダとの経営統合協議を打ち切る決定を下したが、厳しい経営状況を打破するため、方針を転換。日産関係者によると、「完全子会社化にはならない可能性もあるが、ホンダの出資を受け入れる方向で協議が進む」と述べた。また、台湾の鴻海精密工業や、日産が筆頭株主である三菱自動車を加えた4社での協業も視野に入れているという。
関係者によると、ホンダとの協業を進める場合、内田氏の退任が条件となる見込みだ。「次期トップ候補の意見は割れている」との声もあるが、指名委員会の大半は内田氏の続投を否定する方向でまとまっている。
「トップも含め、人事が大きく変わる時期に差し掛かっている」と、ある日産関係者は語る。3月6日に予定される指名委員会でトップ候補や人材育成について協議され、3月中旬の取締役会で決定される予定だ。次期トップとしては、ジェレミー・パパン最高財務責任者(CFO)の内部昇格案が浮上している。ホンダが再交渉に応じた場合、パパン氏が交渉を主導する可能性が高い。
内田氏はホンダとの経営統合協議の破談を発表した会見で、「指名委、取締役会、株主が最終的に判断することだが、日産の業績低迷に歯止めをかけ、混乱を収束させることが私の責務だ」と述べ、指名委の判断に委ねる姿勢を示していた。
みずほ銀行の影響か
日産の指名委員会は5人の取締役で構成されている。委員長でソニー(現ソニーグループ)出身のアンドリュー・ハウス氏、ENEOSホールディングス名誉顧問の木村康氏、株主である仏ルノー会長のジャンドミニク・スナール氏、元レーシングドライバーの井原慶子氏、みずほ信託銀行出身の永井素夫氏が名を連ねる。
関係者によると、内田氏の退任にはメインバンクであるみずほ銀行の意向が影響した模様だ。ホンダとの経営統合協議の破談について、みずほ銀行側の意見に近い社外取締役が内田氏の退任を強く求め、指名委の議論を主導しているとされる。
みずほ銀行はホンダとの再交渉を求めており、社外取締役は内田氏に対し、ホンダとの経営統合が進まなかった責任や不十分なリストラ策を追及しているようだ。スナール氏もホンダや鴻海との協業が日産の株価を押し上げる好材料と見ており、内田氏の退任に賛同する意向を示している。
「手のひら返し」の責任は
一方で、日産の混乱の責任を内田氏1人に負わせるだけでは、組織の本質的な変革にはつながらないとの批判もある。ある関係者は「内田氏が退任しても、社外取締役は誰も変わらない見通しだ。それで経営責任が果たされるのか」と指摘する。
日産の取締役12人のうち、ホンダとの協議に反対したのは10人で、賛成は2人にとどまった。ホンダとの経営統合の形を模索するとはいえ、日産の経営陣は短期間で方針を転換することになる。
また、指名委自体の責任を問う声もある。日産は2019年に「指名委員会等設置会社」に移行し、ガバナンス強化を図ったが、現在の指名委5人はすべて当時のメンバーでもある。「内田体制」を長く容認し、混乱を長引かせた責任を免れるわけではない。
ある自動車関係者は「指名委の4人が社外取締役で、形式は整っているが、経営不振を見過ごしてきた。本来なら株主が『株主利益を毀損させた』として社外取締役を訴えるレベルだ」と指摘している。













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