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SNS拡散「コピペ意見」でパブリックコメント急増…「除染土」「マイナ保険証」で顕著

政府が政策案について広く一般から意見を募るパブリックコメント(パブコメ)で、昨年度、1万件以上の意見が寄せられた案件が過去最多となり、同一文面が大量に投稿されていることが明らかになった。SNSで「コピペOK」とする例文の投稿が拡散し、実際に多くの人がそれをそのまま提出したためとみられる。専門家からは「特定意見が世論を反映していると誤解を生み、行政への信頼低下につながりかねない」と懸念する声が上がっている。

読売新聞の分析によると、政府のオンライン意見募集システム「e-Gov(イーガブ)」で2006~2024年度に実施された約3万4000案件を調査したところ、意見が1万件を超えたのは計29案件で、そのうち2024年度は過去最多の10案件に達した。特に多かったのが、福島第一原発事故の除染土再利用に関する案件で、史上最多の20万7850件の意見が集まったが、その96%が全く同一の文章だったことが環境省の精査で判明した。

除染土のパブコメ期間中にはSNS上で「発生場所で保管すべき」「県外使用禁止」といった例文を拡散し、「大量提出」を呼びかける投稿が目立った。これにより、同様の文面が多数寄せられ、提出された意見のうち「反対」や「県外使用禁止」だけを記載したものがそれぞれ約1万件に及んだという。

また、マイナ保険証や新型インフルエンザ対策に関するパブコメなど他の9案件でも、厚生労働省や総務省が「同一文言が大量に寄せられている」と指摘しており、SNS上の呼びかけが影響していると見られる。

パブリックコメント制度は2006年度の改正行政手続法に基づき、公平・透明な行政運営を目指して導入された。提出方法は郵送やオンラインで自由に行えるが、氏名や住所の記入は任意で、件数に制限もない。

専門家らは「パブコメの趣旨が『数』の競争にすり替わってしまうと、本来の意見募集制度が形骸化する恐れがある。意見の量ではなく質を精査する仕組みやルール作りが求められる」と指摘している。

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