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公立高校の併願受験導入検討へ…受験機会は拡大、しかし格差拡大への懸念も

政府が現在、公立高校への出願を一校に限っている現行制度を改め、複数校への出願を可能とする「併願制」の導入を検討している。導入時期は2027年度(令和9年度)の学習指導要領改定に合わせる方向と報じられた。

一方で、文部科学省内では「偏差値による公立校の序列化を助長しかねない」との慎重な声も根強い。併願制は一見すると受験生のチャンスを広げる制度だが、制度設計次第では格差を広げる結果につながる可能性も指摘されている。

産経新聞(7月5日付)によると、近年の公立高校では定員割れが顕著となっており、地域の進学校として知られる大阪府の寝屋川高校や八尾高校でも定員割れが発生。大阪府全体では128校中65校が定員割れとなった。島根県でも松江北高校が定員を下回るなど、公立離れが進んでいる。

こうした背景を踏まえ、公立高校の魅力回復策として併願制の導入が議論されているが、懸念材料も少なくない。東洋経済education×ICT(7月5日付)は、「日比谷―西」「小山台―三田」といった偏差値順の受験が増える可能性を指摘。校風や教育方針を重視して学校を選ぶというこれまでの傾向が、偏差値重視へと変質する恐れもある。

さらに、高校無償化の影響も制度議論に影を落としている。2025年度の都立高校志願者は約3,000人減少。学費負担の軽減により私立志向が強まったことが一因とみられており、併願制導入はその対抗策として位置付けられている。

教育関係者の間では、学力上位や中位層にはメリットが大きい一方で、学力下位層や経済的に選択肢の限られる家庭には不利に働く可能性も指摘される。たとえば、志望する普通科への進学が難しくなり、結果的に工業科や商業科へ進学せざるを得ないケースが増加することが懸念されている。

制度導入に向けては、序列化や格差拡大を抑える仕組みの検討とともに、多様な選択肢を保障する配慮が求められる。

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