[本紹介]学校では学力が伸びない本当の理由

−15刷8万部『残念な教員』著者(現役教師)による、危機の教育論。
−より良い教育のための提言
【内容紹介】
既存の学校から離脱する子供たち、そうした子供たちに対する教育行政の実情、学校や授業を壊していく児童・生徒の現状、学校では勉強ができるようにならない理由、大学や短大・専門学校への最新進学事情、学校という空間・組織が児童・生徒に与える負の心理的側面、学校教師の社会的地位の変化、PTAの感覚変化、世界の学校事情……学校をめぐる数々の問題について、マクロとミクロの視点を行き来しながら、海外との比較も踏まえて論じ、より良い教育を実現するための提言を行う。現役教師で、8万部の『残念な教員』著者による、危機の教育論。
【本文引用】
「学校には“内職”をしに行っている感じです」
「受験が近いんで学校を欠席してます」
こういう受験前の児童・生徒の本音を、学校教師として、また予備校講師として多数聞いてきた。受験での合格という自己利益を優先する行為は、学校中心主義の人々からは嫌われ、徳育の観点から教員には厳しく咎められる。しかし、これは矛盾していないか。学校の授業が自分にとって低次元だから、あるいは自分にとって必要のない科目だから、授業内容とは関係ない“内職”行為をしたり、学校を欠席したりする。当然の思考ではないか。
そういう事態を防ぐには、質の高い授業を用意し、学ぶタイミングや量、順序が考え抜かれたカリキュラム設定が行われて然るべきではないか。それができていないから、児童・生徒から「学校では学力が伸びない」と思われるのである。大人の側が、もっと適切なプログラムを用意するべきだろう。(「はじめに」より)
【著者紹介】
林純次(はやしじゅんじ)
1975年埼玉県生まれ。京都大学大学院教育学研究科修了。大学卒業後、大手新聞社に記者として入社。事件・事故、医療、政治、教育、高校野球などを担当する。フリーランスジャーナリストに転身した後は、カンボジアやパレスチナなどの貧困地帯や紛争地域を取材。教育者に転身し、国語教育や平和教育に勤しむ。2012年度読売教育賞優秀賞(国語教育部門)受賞。IB(国際バカロレア)校での教頭職や教員研修の講師を経て、現在は関西の私学で教鞭を執る傍ら、国内外の中等教育校のスーパーバイザーや教師向けのインストラクターを務めている。著書に『残念な教員』『本物の教育』(いずれも光文社新書)などがある。