米中の経済指標に回復感が鮮明に…来年の世界経済成長見通しに青信号

‐米国12月の製造業指数改善
‐中国11月の産業生産6.2%上昇
‐第一段階の貿易交渉妥結もポジティブに働く
‐専門家「今年よりは良くなる」
‐ユーロ圏の停滞などが下降リスク
来年まであと半月となった現在、世界経済は再び上昇する気配を見せている。米国と中国の経済指標が継続して改善している事によるもので、専門家らはリスク要因が残されてはいるものの、来年の経済成長は少なくとも今年よりは良くなるとの見方だ。
ウォール・ストリート・ジャーナルは現地時間16日、発表された各種指標を引用して「世界的な景気沈滞への憂慮が多少は収まった」と報じた。
多国籍調査企業のIHSマークイットはこの日、12月の米国製造業購買担当者景気指数(PMI)の速報値は52.5だと発表した。PMIは業界アンケートを通じて今後の景気拡大の可能性を測る指数。50を上回れば景気が改善していると考える人が景気の悪化を予想する人より多い事を意味する。同期間の米国サービス業のPMI速報値は52.2となり、最近5ヶ月で最も高い数値となった。
IHSマークイットのチーフ・ビジネス・エコノミスト、クリス・ウィリアムソン氏は「今回の数値は沈滞リスクを退けるに助けとなる進展だという点で歓迎出来る」と話した。IHSマークイットは来年の米国経済が2.2%成長すると予想している。これは今月の米FRBの展望値である2%より高い数値だ。
同日、中国の国家統計局も11月の産業生産が前年同月より6.2%上昇し、前月上昇率の4.2%を上回ったと発表した。また11月の小売販売も同期間で8.0%上昇している。この数値も前月の上昇率7.2%を超える数値だ。
今回の発表直後、スイスのUBS銀行と多国籍コンサルティング企業 オックスフォード・エコノミクスは、来年度の中国の経済成長率予測値をこれまでの5.7%から6.0%に上方修正した。UBSは16日の投資家レポートで今月の米国と中国による第一段階の貿易交渉妥結に言及し、「投資回復と企業展望改善により上げ相場になる株式市場が今回の交渉で更に上昇する」と伝えた。
世界1位2位の経済状況が改善する事で全面的な成長率上昇も期待される。多国籍会計・コンサルティング企業プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は16日に発表した来年度展望報告書で、世界経済の成長率が3.5%に達するとの見通しを伝えた。
これに先立ちIMF(国際通貨基金)は今年と来年の世界の成長率をそれぞれ3.0%、3.4%と推測している。PwCは来年の米国と中国の経済成長率をそれぞれ2.0%、6.0%と予想し、停滞が続いているユーロ圏(ユーロ使用の19ヶ国)経済も1.0%程度成長するとみている。また、来年は特にサービスの貿易が大きく増加し、その規模が7兆ドル(約766兆円)に達する事で過去最高レベルになるとの予測も伝えている。
米国の投資会社レイモンド・ジェームズのチーフ・エコノミスト、スコット・ブラウン氏は「私たちは来年に緩やかな成長を期待している」と、「下降リスクは今年8月に比べればかなり減少している」と話した。
もちろん憂慮の声もみられる。クリスタリナ・ゲオルギエヴァIMF総裁は今月行われたウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで「言うなれば反騰だ。しかし私たちは同時に相当な下降リスクがあるとみている」と話している。
ウォール・ストリート・ジャーナルは特にユーロ圏の成長の流れが停滞しているという点に注目している。またIHSマークイットが16日に公開した日本の12月の製造業PMIは48.8と、8ヶ月連続で景気悪化を示しており、同日発表された英国の12月の製造業PMIも47.4と、今年8月以降で最も低い数値となっている。
翻訳:水野卓
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