米株11年間の強気相場が新型コロナで終焉…ダウ平均は弱気相場に

ニューヨーク株式市場の11年に及ぶ強気相場が終わろうとしている。現地時間11日、ダウ平均株価は先月記録した史上最高値から20%以上下落し、弱気相場へと転換した。S&P500指数とナスダック指数も最高値から19%下落し、弱気相場への転換は目前だ。
英国の中央銀行BOEはこの日、0.5%の積極的な金利引き下げを断行し、英国政府も300億ポンド(約3兆9800億円)の緊急財政政策を発表するなど、各国の対応も早くなってはいるが、市場の不安は解消されていない。
特にニューヨーク株式市場は、取引時間中にWHOによる新型コロナウイルスの世界的な流行、パンデミックが宣言された事で下げ幅が更に大きくなった。
全ドイツ国民の60〜70%が新型コロナウイルスに感染するだろうとのアンゲラ・メルケル首相の暗い展望も市場に悪影響を与えた。またサウジアラビアがサウジアラムコに対し、原油生産能力を1日1200万バレルから1300万バレルへ、1日1000万バレルの増産を指示したとの情報により、国際原油価格が4%暴落した事も株式市場には悪材料として働いた。
■ニューヨーク株式市場、11年の強気相場終わる
ウォール・ストリート・ジャーナル、フィナンシャル・タイムズ、CNBCなど海外メディアによると、ニューヨーク株式市場はダウ平均株価が弱気相場に転換し、事実上の弱気相場に入った。
ダウ平均株価は前日比1464.94ポイント(5.86%)下落した2万3553.22で取引を終え、先月12日に記録した史上最高値から20%以上下落して弱気相場に転換した。2009年から始まった11年に及ぶ強気相場に終止符が打たれた。
S&P500指数は140.85ポイント(4.89%)下落した2741.38、ナスダック指数は392.20ポイント(4.70%)下落した7952.05となった。
S&P500指数もナスダック指数も直近の最高値となる史上最高値から約19%下落し、弱気相場への転換が近付いている。S&P500指数は2708.92まで下がると弱気相場に転換した事になる。
ゴールドマン・サックスは、ニューヨーク株式市場の強気相場がほぼ終わった事で、S&P500指数は今年中盤まで更に15%下落し、最高値から28%下落すると予測している。
9日の暴落、10日の反騰に続き、この日は再び下落で始まったニューヨーク株式市場は、取引時間中にWHOが新型コロナウイルスのパンデミックを宣言した事で下げ幅が更に拡大した。WHOは新型コロナウイルスの「拡散と深刻性」、「憂慮すべきレベルの対応手段不足」に対し、「深く憂慮している」と述べた。
MUFGユニオン・バンクのチーフエコノミスト、クリス・ラプキー氏は「株式市場の強気相場の終わりが目の前にある」と話している。
ゴールドマン・サックスは、原油価格の下落と金利引き下げがエネルギーや金融業の業績を悪化させ、他部門の企業活動もこれまでの予想より更に弱まる可能性が高いと憂慮している。
ゴールドマン・サックスはレポートで「実体経済と金融経済の両方が深刻な弱さを見せている」と指摘した。
■米−欧株式市場の分化が始まる
米国のドナルド・トランプ大統領が前日提示した「年末まで給与所得税率0%への引き下げ」案も市場には受け入れられなかった。
米国政府が詳細を公開していない上、上院で民主党が効果を疑問視しており、反対する意向であるためだ。
市場の一部では、政策対応の違いから米国とヨーロッパの市場の間に分化が起きる可能性もあるとみられている。ヨーロッパの早い対応に比べ、米国の対応が鈍い事により、ニューヨーク株式市場の下落が更に進むとの見方だ。
プリンシパル・グローバル・インベスターズのチーフ市場ストラテジスト、シーマ・シャー氏は「米国政府の適切な政策対応の欠如を考えると、米国とヨーロッパの株式市場の流れが分化し、差も広がる可能性がある」と、「米国経済が今回のショックを克服し、鈍化を短期化させられる最善の案は、強力かつバランスの取れた政策担当者らの対応しかない」と話している。
米FRBの電撃金利引き下げ以外にこれといった政策対応が取られていない米国とは違い、ヨーロッパでは素早い動きがみられる。
英国政府はこの日、300億ポンド規模の大々的な財政出動計画を発表し、「緊縮財政」にこだわりを見せていたドイツのメルケル首相も遂に財政出動に舵を切った。
メルケル首相は今の様な状況で赤字財政は問題とならない事を明言した。
この日のフランクフルト株式市場のダックス30指数は0.35%、ロンドン株式市場のFTSE100指数は1.40%下落し、パリ株式市場のCAC40指数も0.57%下落したが、ヨーロッパの株式市場はニューヨーク株式市場に比べ善戦している。
メルケル首相は「必要な全ての手段を」導入すると、長い間こだわりを見せていた均衡財政の原則も放棄する準備が出来ている事を示唆した。また財政赤字に一喜一憂しないと、「今は非常事態」である事を強調した。
翻訳:水野卓
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