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トランプ関税に対する日本の戦略、鍵は“時間”と“非関税障壁”

米国による新たな関税措置、いわゆる“トランプ関税”に対し、日本政府は慎重な姿勢を崩していない。17日から始まる日米貿易交渉を前に、政府内部では「あえて交渉に時間をかける」戦略も浮上しており、焦らず冷静にカードを切る構えだ。

14日には石破茂首相が「急いては事を仕損じる」と述べ、拙速な妥結を避ける姿勢を強調。自民党の斎藤健前経産相も「すでに関税がかけられている以上、短期・長期の両にらみで交渉に臨むべき」と慎重論を支持した。

米国との交渉において、日本が持ち得る“カード”としては、農産品市場の開放や防衛装備品の追加購入、エネルギー分野での協力が挙げられる。特に米国側は、日本のコメに対する700%超の高関税に注目しており、農業分野の譲歩要求が予想される。

ただし石破首相は、国会答弁で「具体的な交渉内容は控える」と明言を避け、交渉前に手の内を見せない姿勢を貫いている。軽々に交渉材料を提示することは、かえって日本に不利をもたらすとの認識だ。

一方で、非関税障壁に関しては踏み込んだ対応を取る方針を示した。首相は「米国が障壁と捉える事柄に対し、日本としてどう対応するかは早急に示す必要がある」と述べた。

実際、米通商代表部(USTR)が公表した2025年版「外国貿易障壁報告書」には、日本の自動車補助金制度やEVの急速充電規格が、アメリカ車排除の要因とされており、是正を求める動きが強まると見られる。

さらに、コメの輸入・流通システムの透明性欠如も問題視されており、制度全体の見直しが迫られる可能性もある。

とはいえ、現時点でアメリカ側が具体的に何を求めてくるのかは不透明だ。政治ジャーナリストの青山和弘氏は「日本に主導権はなく、交渉は受け身にならざるを得ない。だからこそ日本が先に譲歩してはならない」と指摘する。

今回の交渉は、単なる関税問題にとどまらず、今後の日米経済関係全体に波及する可能性がある。日本は慎重かつ戦略的な姿勢で、米国の出方を冷静に見極めながら臨む必要がある。

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