日本政府が掲げる「不法滞在者ゼロプラン」をめぐり、自民党と日本弁護士連合会(日弁連)との対立が深まっている。7月22日に日弁連が会長声明で同プランに明確な反対を示したのに対し、自民党の塩崎彰久衆院議員は同28日、自身のSNSを通じて日弁連の主張に反論する意見を発信した。
法務省が5月に発表した同プランは、「国民の安全・安心」の名の下、不法滞在者の徹底的排除を目指すもの。入国管理、在留管理・難民審査、出国・送還という3段階で、制度の濫用とされる難民申請への対応や退去強制令書の確実な執行を柱としている。
塩崎議員は、「プランはSNSでの感情的な情報拡散に流されず、冷静な政策論議を促すものであり、ルールを守る外国人と国民が安心して共生できる社会を実現するためのもの」と強調。難民審査の迅速化により「本当に保護されるべき難民」への対応が加速すると述べた。また、退去命令を受けた外国人の送還についても、「法の下で確定した措置であり、安全な送還手段を強化する」と主張した。
一方、日弁連は声明で、同プランが「ルールを守らない外国人=治安悪化の要因」と結びつける誤解を生むと批判。特に難民認定制度について、誤用とされる申請の中にも実際に裁判で難民と認定された例が複数あることを指摘し、「画一的な案件振り分けや早期送還は、本来保護されるべき人々を排除する恐れがある」と警鐘を鳴らした。また、DV被害者や人身売買被害者、子どもの権利や家族結合の観点から在留が正当化されうる事例への考慮が欠けていると訴えた。
実際、名古屋高裁や東京地裁では、3回目の難民申請でも司法で難民と認定された判例が出ており、制度の不備が裁判所で是正される事例が確認されている。
今回の応酬は、入管行政における人権保障と治安・制度運用のバランスを問う深い議論へと発展する可能性がある。政府与党は制度の厳格運用による社会の安定を強調し、日弁連は憲法と国際人権法に基づいた慎重な制度運用を求めており、今後の国会論戦や世論の動向が注目される。













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