米、対中国関税の一部撤回を検討

米、対中国関税の一部撤回を検討
米国が中国製品に課する関税の全部または一部を取り下げることを検討していると、米紙ウォールストリート・ジャーナルが17日(現地時間)報じた。記事によると、代表的な穏健派のムニューシン財務長官が数回の交渉チームの内部会議で、このような提案を出したという。貿易戦争の衝撃で大きく揺れている金融市場を安定させるため、中国との貿易交渉で米国の譲歩が必要という考えが背景になっている。
これまで「米国が弱く見えかねない」として強硬派を支持してきたトランプ大統領も、以前のとは異なり、今回はムニューシン財務長官の意見に傾ける可能性があると、同紙は報じた。
■拒否することができない提案、関税撤回
消息筋によると、ムニューシン氏は数回にわたる内部戦略会議で関税撤回案を持ち出した。同氏は中国製品2000億ドルに賦課されている関税を撤回し、追加処置として昨年8月から課されている500億ドルのうち、製品に対する関税もなくす案を提示している。この案を今月30日にワシントンで開かれる米中貿易交渉の席で、中国交渉団に提示しようというのがムニューシン氏の提案だ。
関税撤回提案が行われれば、貿易戦争の衝撃で景気減速に直面した中国としては立派に撤退できる名分となる。習近平国家主席の体面を汚さず、米国の譲歩に中国も譲歩するという対応が可能となる。海外メディアは「中国にとって拒否できない提案になる」と伝えている。
■強硬気流にも変化の兆し
対中強硬派のライトハイザー米通商代表部(USTR)代表はまだこれに反対しており、トランプ大統領も反対する可能性がある。しかし、これまでの雰囲気とは異なる気流も見え始まったという。
ライトハイザー氏は、中国が以前の合意を守っていなかったことに踏まえ、中国が合意事項を実践する姿を見せるときのみ関税撤回をするべきだという立場。しかし、今度は態度を多少和らげているように見えるという。消息筋によると、今回の交渉締め切りである3月1日まで、米国が良好な条件で合意に至ると、いくつかの関税をなくすという案を提案するなどライトハイザー氏の態度が融和的に転じた。期限までに合意に至らない場合は、米国は翌日から2000億ドル規模の中国製品の関税率を10%から25%へと大幅に引き上げることになる。
トランプ大統領も今回はムニューシン氏の意見に同意する可能性が高いと思われる。消息筋によると、トランプ大統領が貿易合意をしたいというシグナルを確実に見せていて、ライトハイザー氏にも成果を催促している。14日には記者団に「中国との交渉が(合意に至ることについて)可能だと思う」と自信を示した。
■見通しはまだ不透明
ホワイトハウスの関係者によると、トランプ大統領は貿易戦争がもたらした米株価の暴落とその後の高い変動性に驚愕しているものの、その一方では自身が中国に圧力をかけているという点を確実に示す関税を諦める意向がないという。中国に弱い姿を見せたくないことも関税撤回が失敗に終わる可能性を高めている。
ただし、対中国強硬派と知られているクシュナー大統領上級顧問が関税の一部撤回に共感しており、トランプ大統領の対中国貿易政策の理論的基礎を提供しているハドソン研究所のマイケル・ピルスベリー氏もいくつかの条件を前提に関税撤回を交渉手段にする案に賛成しているため、トランプ大統領の意志が関税の一部撤回に回る可能性は排除できない状況だ。
一方、トランプ政権が貿易交渉の妥結のために関税撤回を検討していることが株式市場にも好材料として作用し、前日のニューヨーク株式市場は大幅に上昇した。