再び浮上する「北朝鮮リスク」…韓国の国家信用等級格上げは遠く

再び浮上する「北朝鮮リスク」…韓国の国家信用等級格上げは遠く
-7、8月の国家信用格付けで格下げの可能性浮上
-これまで朝鮮半島緊張緩和の反映求めたが、再び難航の兆候
韓国の国家信用等級格上げの障害となっていた北朝鮮リスクが、再び浮上する兆候がみられる。
これは北朝鮮が今月4日、日本海海上に突如短距離発射体数発を発射した事による。昨年の米韓朝首脳会談をきっかけに、朝鮮半島の緊張は大きく改善されたとの判断に基づき、国際信用評価企業に対し、この事を強調して来た韓国政府にも当惑がみられる。今後北朝鮮リスクにより、国家信用等級格上げが再び難航するのではとの声も聞かれる。
韓国企画財政部によると7日、ムーディーズは今年7月、スタンダード&プアーズ(S&P)は8月に、それぞれ韓国の国家信用等級を発表するとみられている。またフィッチは来年1月に発表するとみられる。
現在ムーディーズとS&Pは韓国の国家信用等級を、それぞれ21等級中で上から3番目の等級となる「Aa2」と「AA」と評価している。ムーディーズは2015年12月から、S&Pは2016年8月から、現在の等級を維持している。フィッチは2012年9月から4番目に高い「AA-」等級で据え置いている。
国際信用評価企業が韓国の国家信用等級を数年間据え置いている最も大きな理由のひとつが、地政学的リスクだ。
これらの企業は韓国の国家信用等級を発表する度に、口を揃えて「北朝鮮関連の地政学的リスクは国家信用等級格上げへの障害要因」だと指摘して来た。S&Pは昨年10月、地政学的リスクが減少したと判断する基準として、「北朝鮮の相当なレベルの経済自由化の進展」だと言及している。つまり少なくとも、北朝鮮に改革開放の動きが見られなければならないという事だ。
しかし最近の状況を見ると、北朝鮮の改革開放はおろか、再び朝鮮半島の緊張が高まると憂慮する声ばかりが大きくなっている。2017年には北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)発射実験などにより、朝鮮半島の緊張は最高レベルに達していた。この時、国家破綻のリスクを表す韓国のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のプレミアムや、韓国ウォン=米ドルのレートが大きく揺れるなど、金融外為市場も大きく動揺した。
そうした中、昨年の米韓朝首脳会談をきっかけに、緊張が大きく緩和されたものの、2度行われた米朝首脳会談は全て決裂し、交渉は膠着状態に陥ってしまった。今回ミサイル発射はその強度が低いものの、北朝鮮の挑発が再び始まったのだと考えられる。
韓国政府としても戸惑うばかりだ。洪楠基(ホン・ナムギ)経済部総理兼企画財政部長官は先月米国で、ムーディーズ、フィッチ、S&Pの国家信用等級担当者と相次いで面会し、地政学的リスクの緩和などを国家信用等級評価に反映するよう求めていた。しかし北朝鮮の挑発が再開した事により、韓国の地政学的リスクは、いつでも浮上する可能性があるとの指摘を避ける事は難しくなった。
延世大のキム・ジョンシク教授は、「事実上、北朝鮮が米朝間合意に反しただけに、今後米国が強硬な対応を取る可能性も排除出来ない」と、「これにより再び緊張が高まれば、韓国の金融外為市場に影響を与え、国家信頼度も下がる可能性がある」と話した。
翻訳︰水野卓