パウエル議長、「通貨政策は万能ではない」…トランプ氏の貿易戦争猛非難

パウエル議長、「通貨政策は万能ではない」…トランプ氏の貿易戦争猛非難
‐FRB「トランプ大統領が最大の脅威」
米FRBのジェーロム・パウエル議長が就任以来、最も激しくドナルド・トランプ米大統領の貿易戦争を批判した。間違った貿易政策の弊害を通貨政策で補完する事は制限的だと釘を差した。ただ市場の予想通り9月の金利引き下げはほぼ既定事実化し、今後の更なる追加引き下げの可能性も残した。
■貿易戦争の衝撃は一部に限り吸収可能
ウォール・ストリート・ジャーナルなどの海外メディアによると、パウエル議長は23日、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれた年次カンファレンスで、貿易戦争による米国経済の成長鈍化の可能性を指摘し、この様に話した。
先月11年振りに金利引き下げを断行したパウエル議長は、来月17〜18日のFOMC会議で政策金利を更に0.25%ポイント引き下げ、今後も更なる追加引き下げに出る可能性を示唆した。ただし今後の通貨緩和レベルについては言及しなかった。通貨政策の基調は先月のFOMC会議で明らかにした「中間調整」レベルの金利引き下げではなく「緩和」に向かったとみられる。
パウエル議長は「(米国経済)拡張の流れの持続に適合した行動をとる」と話した。また債券市場の動きにより、FRBの政策の方向性が事実上既に決定している事を示唆した。債券市場の追加金利引き下げ予想が米国経済と金融市場を浮揚させているだけに、この様な期待を充足させられなかった場合、市場展望や経済展望に一部ネガティブな影響を与える事になるという意味だ。
またFRBの通貨政策は強力な手段ではあるものの、米中貿易戦争の衝撃を全て吸収する事は出来ないと警告している。貿易戦争悪化による企業や投資家の不安を取り除く事に、通貨政策はそこまで効果的ではないという発言だ。更に「現状況において、どの様に政策的に対応しなければならないのか、ガイドラインになる過去の事例が無い」とも話している。
トランプ大統領はこの日もパウエル議長への揺さぶりを続けた。トランプ大統領はツイッターで「いつもそうだった様に、FRBは”何も”せずにいる」と、「私が何をするのか知りも訪ねもしないまま話せるという事が、ただ信じられないだけ」だとパウエル議長を非難した。更に「我々の最大の敵は誰なのか。ジェイ・パウエルなのか、それとも習(近平中国)国家主席なのか」と、パウエル議長を事実上貿易戦争における内部の敵と見なした。
■反撃に出る中央銀行
トランプ大統領はジャクソンホールでのカンファレンスで、パウエル議長のみならず、スタンレー・フィッシャー前FRB副議長やマーク・カーニーBOE(イングランド銀行)総裁などからも辛辣な批判を受けた。
パウエル議長は、トランプ大統領の貿易戦争により米製造業の活動が脆弱になったと、投資が鈍化し堅調に続いて来た米国経済に暗雲が立ち込めていると非難した。
フィッシャー前副議長もこれに加勢した。同氏はトランプ大統領の行動が国際通貨システムにとって最大の脅威であると、トランプ大統領が「世界的な貿易秩序を破壊しようとしている」と話した。また「我々は今、日々状況が悪化するシステムに置かれている」とも話している。
カーニーBOE総裁も貿易戦争により世界経済の成長鈍化が「予想より、より広範囲かつ継続的であり、破壊的になる可能性もある」と警告した。
翻訳:水野卓
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