【南北離散家族】 『お母さん』『娘よ』65年振りに呼ぶ名前…涙の金剛山

【写真】第21回南北離散家族面会初日の20日午後、江原道高城の金剛山面会所にて開かれた初の合同面会で、韓国側のペク・ミンジュンさん(93歳)が息子の妻リ・ボクトクさんと出会い、涙を拭いてあげる姿。写真=共同取材団

【南北離散家族】 『お母さん』『娘よ』65年振りに呼ぶ名前…涙の金剛山

-生き別れとなった家族、2時間の面会で話の花を咲かす
-高齢により亡くなる家族増加…面会定例化を求める声が強まる

『お母さん!』
『ああ私の娘よ!』

ハン・シンジャさん(99歳)は北朝鮮に残して来た二人の娘に出会うと、声を上げ涙を流しながら二人の娘の頬をさすり、二人を両脇に座らせて固く手を握り合った。同伴家族として連れて来た韓国にいる息子と娘も横で涙を流し、ハンさんは話している間もずっと、固く握った娘の手を離さなかった。

20日、金剛山ホテルで65年振りに、離れ離れになっていた家族に再会した離散家族らは、合同面会の2時間の間、再会の喜びと長く続いた離散の苦痛を共に分かち合った。離散家族らは年老いた手で、50年を超す時の流れ中で変わってしまった顔を撫でながら、時には嗚咽し、時には喜びの笑みを浮かべ、一緒に歌を歌ったりしていた。色褪せた昔の写真の中にお互いの顔を探し、離れ離れになった当時の話をし、現在南北にいる家族の様子を尋ねたりもしていた。

■胸が詰まるエピソード、感動の涙に包まれる
分断の歴史が劇的に進んだ様に、今回の離散家族の面会でも正にドラマの様な身につまされるエピソードがあった。ユ・グァンシクさん(89歳)は今回の面会で会った事のない娘と面会した。韓国に向かった当時、奥さんが娘を妊娠していたという事実を知らなかったためだ。ユさんは『私に娘がいるという知らせを貰って、神様に感謝し、長生きした甲斐があったと喜びが押し寄せた来た』と話した。ユさんの娘ユ・ヨンオクさんは白黒写真の中の父親を見ると、涙を流しながら若かりし頃の父親の写真と家族の写真を取り出し、ユさんに見せてあげた。ユさんは涙を必死に堪えていた。

キム・チュンシクさん(80歳)は黄海道甕津の出身で、朝鮮戦争当時はひと月もすれば状況が落ち着くだろうと考え、両親と弟と共に南に避難した。二人の妹は、祖父母と共に故郷に残って土地と財産を守りながら、家族はすぐに戻って来るだろうと思って待っていたものの、そのまま離散家族となってしまった。キムさんが面会場に現れると、北朝鮮側の二人の妹は兄の胸に顔を埋め嗚咽した。キムさんは『チュンジャ、チュンニョ、顔を上げて見てくれ、私がチュンシクだ』と、『母と父はお前たちに会いたいと胸を痛めていたが、亡くなってしまった』と伝え、涙を流した。

■4.27板門店宣言、面会再開の呼び水に
第一回南北離散家族面会は、故・金大中大統領が在任中だった2000年8月15日から3日間に渡って行われた。最初の面会以降、離散家族の面会は毎年1、2回ずつ行われた。2003年の様に2月と6月、9月と3回行われた年もあった。しかし北朝鮮の核兵器開発が始まり南北関係が悪化すると、年中行事になっていた離散家族面会も次第にギクシャクし始めた。そして2016年1月に北朝鮮が6回目の核実験を強行し、面会は2015年10月を最後に中断された。

また中国国内の北朝鮮レストラン従業員脱北問題も面会再開の妨げとなった。この様に途絶えていた南北離散家族の面会が再開された事は、文在寅大統領と金正恩北朝鮮国務委員長が、4月27日に板門店で面会し、首脳会談を行なった結果だと言える。この時、両首脳は南北関係が改善された点と、8.15光復節の73周年に合わせて、南北離散家族の面会再開に合意した。

■超高齢化、面会定例化への期待高まる
ようやく離散家族の面会が再開されたものの、面会事業には改善点が山積している。南北がそれぞれの政府を樹立した1948年を基準とすれば70年、1953年の停戦合意直後からでも65年が過ぎている。長い歳月が流れた事で、高齢で亡くなる離散家族第一世代も増えて来ている。

離散家族の面会が始まって以来、韓国側で面会を申請した人数は13万2603人に達したものの、現在の生存者は5万6862人となっている。申請者の57%、7万5000人以上が既に亡くなっている事になる。生存している申請者の60%以上が、韓国人の平均寿命を超える82歳以上だという事も問題だ。

現在の様に一回の面会で、南北の離散家族がそれぞれ100名ずつ面会するやり方では、離散家族第一世代のほとんどが面会の機会を得る事が出来ず、離散と失郷の悲しみを抱いたままこの世を去る事になってしまう。

現在、面会の定例化と大規模な面会などが代案として提起されている。しかし住民登録などの電子システムが整備されていない北朝鮮の状況と、これらのインフラ構築に掛かる時間、北朝鮮の非核化に関連した米国による制裁など、残された時間は少ないが超えなければならない壁は少なくない。

翻訳:水野卓
info@fnnews.jp

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