スエズ運河座礁事故の影響、解消まで数ヶ月か?

スエズ運河の運航が再開した。しかし「エバーギブン号」が1週間運河を塞いでいたことは、世界のサプライ・チェーンに数ヶ月間影響を及ぼすとみられる。

経済チャンネルCNBCは現地時間29日、運河の運航が再開したことで市場が安堵してはいるものの、専門家らはこの影響が数ヶ月は続くとみており、暫くの間、サプライ・チェーンがスムーズに動くのは難しいと悲観的であることを報じた。

供給網管理協会(ASCM)のダグラス・ケント首席副会長は「スエズ運河を塞いでいた船を成功裏に移動出来たことに歓喜しているが、これが終わりではない」と話した。

ケント副会長は「これにより、港湾やその他物流の積帯が続くことは明らかだ」と、「以後の混乱も同様に避けられないだろう」とも話している。

世界最大の貨物船のひとつに上げられるパナマ船籍・日本の正栄汽船所有・台湾の海運企業エバーグリーン所属のコンテナ船エバーギブン号は、エバーグリーンの説明では23日に強い突風により押し流され岸壁に座礁した。ニューヨークにあるエンパイアステートビルの高さに匹敵する全長のエバーギブン号がスエズ運河を塞いだことで、アジアとヨーロッパを結ぶ航路が事実上閉ざされ、約400隻の船舶が運河周辺で身動き出来ずにいることが分かっている。

エバーギブン号はこの日、浮揚に成功し、これにより運河の運航も再開したが、この衝撃は容易に回復しないとみられる。

スエズ運河は全世界の交易量の12%、全世界の海上石油輸送の10%を占める場所で、1週間の空白期間が世界のサプライ・チェーンに深刻な影響を及ぼすのは避けられない。

国の海運専門紙ロイズリストによると、スエズ運河を通過する物流規模は金額にすると1間あたり4億ドル(約439億円)、1日では90億ドル(約9888億円)を超える。

ノースイースタン大学政治学科のスティーブン・フリン教授は「このレベルの規模の1週間に及ぶ運送の障害は、今後も雪だるま式に影響が現れるだろう」と、「状況が整理され正常レベル付近に回復するまで、少なくとも60日はかかるだろう」とみている。

フリン教授は「このレベルの障害は24時間ごとにウォーターフォール効果が現れる」と付け加えた。

全世界のサプライ・チェーンは連鎖的に支障をきたすとみられる。

いっぺんに押し寄せる船舶により、ただでさえ積帯状態となっている港湾がとてつもない混雑に直面し、船舶の運航スケジュールも次々に遅延することになる。

何より新型コロナウイルス感染症の世界的な流行以降、逼迫している全世界のサプライ・チェーンが今後更なる逼迫に苦しむとみられる。

部品不足で組立生産ラインが停止する可能性も高まった。部品供給障害により品薄状態となっている半導体の生産も遅れる見込みだ。

フリン教授は全世界の物流網は「今の様に深刻な逼迫を経験したことが無い」と、「逼迫は相当長い期間に及ぶだろう」と悲観的だ。

また「今が始まりに過ぎない」と、「全世界が、大規模な協力が必要な物流網再設定の瀬戸際に追い込まれた」と話している。

一方、効率性のため超大型航空機が衰退し、中型航空機が大勢を占める航空市場と違い、超大型貨物船が主流となっている海運業界では、今回の事故をきっかけに変化の風が吹く可能性もある。

費用節減や効率性向上のため、貨物船の大きさは徐々に大きくなりつつあるが、今回の事故の様に大型貨物船一隻の事故が全世界の物流網に深刻な影響を及ぼすほど、貨物船の大型化によるリスクも高まっているためだ。

特に超大型貨物船が入港し、積み下ろしが可能な港は数えるほどしか無く、今回の様に貨物船の運航が1週間中断すると、これはほぼ災害に近いものとなる。

エバーギブン号の座礁は、全世界の供給網と海運産業全般に今後も相当な影を落とすとみられる。

翻訳:水野卓
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