「日本移民日記」…MOMENT JOONの10年間の体験が詰まったエッセイ

自らを「移民者ラッパー」と名乗るMOMENT JOONというラッパーが、日本で十年を過ごすうちに体験し、思考したことが詰まっているエッセイ。
2020年に発表したアルバム『Passport & Garcon』で、日本社会における排外主義の興隆や差別意識の蔓延、同調圧力、シニシズムといったものを怒りや不安などを描き、その上で「君が居るから日本は美しい」と歌ったMoment Joon。彼のアルバムは、これまでの日本のヒップホップでは描かれなかった世界を表現したものとして絶賛された同時に、いっぽうで作品そのものに向き合うことなく、「社会派」や「シリアス」といった狭い領域に押し込めてしまうような批評も散見された。
ミュージシャンである同時に、日本語の外の世界で生まれ育って日本社会に「渡ってきた」経験を持ったMoment Joonが、十年間考えてきたことを惜しげもなく吐き出した記録。日本のヒップホップ、「外人」であること、差別語、詩人・金時鐘との出会いなど、日々の経験と思索から見える日本社会の風景を、鋭く率直な言葉で綴る。硬直した社会にくさびを打ち込む、待望にして初の著作。
ー著者紹介
MOMENT JOON(モーメント ジューン)
ラッパー。ソウル特別市出身、大阪府池田市井口堂在住。移民である自身の経験に根ざした唯一無二の表現を追求し、2020年のファーストアルバム『Passport & Garcon』では、日本社会における排外主義の興隆や差別意識の蔓延、同調圧力、シニシズムといったものを怒りや不安とともに突きつけ、その上で「君が居るから日本は美しい」と歌って大きな反響を呼んだ。執筆の分野でも『文藝』(河出書房新社)に自身の徴兵体験をもとにした小説「三代 兵役、逃亡、夢」を発表するなど、多方面に活躍している。本書は岩波書店のWEBマガジン「たねをまく」に連載された「日本移民日記」(2020年11月~2021年9月)に適宜加筆・修正を行った。付録「僕らの孤独の住所は日本」は『図書』2020年1月号に掲載された。
ー目次
まえがき
1 「いない」と言われても僕はここに「いる」
2 日本語上手ですね
3 引退します。ホープマシーン。
4 井口堂から、次のホームへ
5 「チョン」と「Nワード」、そしてラップ(前編)
6 「チョン」と「Nワード」、そしてラップ(後編)
7 僕が在日になる日
8 シリアス金髪
9 バッドエンドへようこそ
10 私の愛の住所は