中国政府、iPhoneの公務使用禁止…アップル株価急落

iPhone15の発売を前に、期待感から上昇傾向にあったアップルの株価が現地時間6日、急落した。中国政府が中央機関に対し、iPhoneや海外ブランドの機器を公務で使用したり、自宅で使っている機器を職場に持ち込まない様に指示したとの報道によるものとみられる。
−「iPhone、公務での使用禁止」
ウォール・ストリート・ジャーナルはこの日、消息筋の言葉を引用し、ここ数週間の間に中央部署の公務員や各規制機関の職員らに対し、上級職員よりこの様な指示があったことを報じた。米国との緊張が高まっている中、中国は海外技術への依存度を下げ、サイバーセキュリティを強化するために一連の措置を続けている。iPhoneをはじめとする海外製スマート機器を通じ、自国の敏感な情報が外国に流出することを制限するための措置とみられる。
今回の措置は、中国の高級スマートフォン市場を掌握しているアップルには大きな打撃になりかねない規制だ。中国は米国と共にアップルの2大市場で、アップルは総売上の約19%を中国市場に依存している。ウォール・ストリート・ジャーナルは、中国当局のこの様な規制措置がどこまで広範囲に渡るのかは不明としながらも、同様の措置が一部中国政府の規制部署にも適用されていると報じている。
中国がiPhoneの使用を規制するのは今回が初めてではない。過去数年間、一部の部署に対し、iPhoneを公務で使用できない様に規制している。しかし消息筋によると、今回は規制される部署の数がより広範囲であるという。
−米国の規制と同様の対応
今回の中国の規制は、米国が先に中国に対し打ち出した規制と同様だ。米国は中国ファーウェイのスマートフォンや移動通信設備の使用を禁止し、連邦公務員が中国バイトダンス傘下のSNS「TikTok」の使用を出来ない様にしている。
米国の機密流出への憂慮から始まった使用禁止措置を、中国が同様に適用したのだとみられる。中国は米国との緊張が高まっていることで、国家の安全保障を強化しており、この様な流れの中で最近数年間、データ・オンライン活動に対する国家の統制や干渉を拡大している。
今年7月には範囲が大幅に拡大した改正反スパイ法を施行した。ジョージ・W・ブッシュ元大統領やバラック・オバマの元大統領時代のNSC(国家安全保障委員会)で中国部門の責任者を務めたポール・ヘンリー氏は、今回の中国の措置は国家安全保障と経済的憂慮の両方に対応する両王手だと話している。安全保障の側面からは政府公務員のデータに接近できるバックドアの遮断、経済的側面からは国内企業の市場占有率を引き上げる役割、この両方が期待できるとの見方だ。
中国は今回のアップルのiPhone禁止措置以前にも、各中央政府部署と国営企業に対し、海外ブランドのコンピューター、基本ソフト(OS)、ソフトウェアを自国製品に変更する様に勧めている。
−アップル、打撃が長期化するかは不透明
しかし今回の措置が、短期的にはアップルにとって悪材料となるものの、中国市場での売上に中長期的に打撃を与えるかまでは不透明だ。これまでの経験から見ても、実際の打撃はほぼ無い可能性が高い。
2021年のテスラがその代表例だ。中国は当時、軍人や主な国営企業の職員らに対し、テスラのEV車の使用を禁止した。テスラのEV車が国家安全保障関連施設を出入りすることで、撮影された動画が米国に渡る可能性を憂慮しての措置だった。
これにより、テスラの株価は一時下落したものの、以後、中国での需要減少への憂慮は杞憂に過ぎなかったことが分かった。テスラは依然として中国でよく乗られている。格安EV車、ハイブリッド車メーカーのBYDを除けば、テスラは販売台数基準で中国第2位のEV車メーカーだ。
翻訳:水野卓
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