中国囲碁界トップの柯潔9段の動画が突然削除、アジア大会食堂で「吐きそうだ」で検閲か

(写真は、柯潔9段のTikTok動画から)
中国・杭州アジア大会の今月23日の開幕を目前に、日本でもその名が知られる中国囲碁界のトップスター棋士「柯潔9段(26才)」がアジア大会の選手村で食事をし、「吐きそうだ」と発言するなど、食べ物への不満を訴える動画がオンライン上に拡散した後、突如削除されたことが話題となっている。
この動画が削除された後には「本当に美味しい食事でした」と、称賛する動画ばかりが上がっており、当局による「検閲」を疑う声も強まっている。
柯潔9段は今月5日、自身のSNSアカウントに、選手村食堂で羊肉を食べた後、「本当にまずくて吐きそうだ」、「この羊肉で”つわり”を起こしそうだ」と不満を述べたり、サムギョプサルを見て、「毛が多い」、「構わない。食べないから」などと発言する動画を投稿した。
柯潔9段は、36万人のフォロワーと143万の”いいね”を獲得した動画を持つインフルエンサーでもある。今回の映像もファンらを通じ、あっという間にオンライン上で拡散された。しかし突然、柯潔9段が投稿した元の動画はもちろん、ファンらが共有した動画まで全ての動画が削除され、これに対する疑問の声が湧き上がっている。米国ニューヨークに本社のある中国語メディアNTD TVは、柯潔9段の動画の内容に関する中国メディアの記事も全て削除されたと報じた。
台湾のTVBは「動画が中国当局により取り下げられ、中国内の主なプラットフォームからも全てが消えた」と、柯潔9段の動画が消えた背景には、中国当局の存在があるとみている。中国政府は、杭州アジア大会選手村の食事メニューに「東坡肉」などの杭州名物が含まれることを盛んに広報して来た。
今回の動画が削除された後、柯潔9段のSNSに上がった別の動画は、中国当局による「検閲疑惑」をより強く抱かせるものだった。柯潔9段が公開した「あなたが求めるアジア大会の食事がここにある」と題した選手村での食事の動画には、柯潔9段が料理を食べて称賛する様子が映し出されていたためだ。
それ以降も柯潔9段は「アジア大会の準備日記」として別の動画を投稿した。この動画でも柯潔9段は選手村の食事に対する称賛を続けている。柯潔9段は様々な料理を取り分けて食事をした後、食べ終えた空き皿を見せ、「見ました?本当に美味しい食事でした」、「実は今私たちが食べているのはアジア大会の選手村で提供される正式な食事ではないんです」と伝えている。また「アジア大会の選手村では、これより高価で、様々な種類の食べ物が提供されるそうです。そして最も正統な杭州料理も味わうことができます」、「本当に最高の1日はまだ来ていません」と発言した。
この動画には英語の字幕もつけられている。英語の字幕では「今後、栄養豊富な食べ物が提供される」、「杭州ならではの料理を食べられると思うと期待が大きい」などと記されている。
柯潔9段は中国囲碁界最大のスター棋士で、韓国の李世ドル9段と共に世界の囲碁界をリードしたとの評価を得ている人物。李世ドル9段が2016年にグーグル・ディープマインドのアルファ碁と対局をしたのに続き、柯潔9段は2017年にアルファ碁との対局を繰り広げている。
囲碁は13年ぶりにアジア大会の正式種目として採択された。柯潔9段は世界ランキング1位の韓国の申眞諝9段と金メダルを争うことが期待されている。
翻訳:水野卓
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