55歳のジャック・マー会長、早期退任する本当の理由は?
55歳のジャック・マー会長、早期退任する本当の理由は?
-中国市場支配するも世界展開は難しく専門経営者システムに変換
-経営改革で再跳躍準備
中国ネット通販大手アリババ・グループが創立20年になる来年、大きな変身を試みる。アリババの創業者ジャック・マー会長は、来年9月10日に会長職を辞する事を公式に宣言した。併せてマー会長が現在就いているアリババ理事会主席(会長)の席をダニエル・チャンCEOに譲るとした。創業者であるマー会長中心のワンマン・オーナー体制が持つリスクを克服するため、専門経営者中心のシステム経営に転換するとみられる。
英語教師出身のマー会長は中国の改革開放の流れに乗って企業人に電撃転身し、1999年にアリババを創業した。中国を代表する企業グループを興した「風雲児」のマー会長が、一層脂の乗ったこの時期に経営の一線から退く決断を下した事になる。
■満55歳、創立20周年での引退
来年9月10日はマー会長の満55歳の誕生日であり、浙江省杭州市のあるアパートでアリババを創立して20年となる日でもある。また創立20周年に合わせて、アリババが再跳躍のための経営改革を断行する時でもある。
マー会長は10日の声明を通じて「本日アリババが19周年を迎える日に、感慨深い気持ちで皆様に申し上げる」と、「理事会の承認を得て、アリババ創立20周年記念の日である来年9月10日、アリババ理事会主席(会長)の席をダニエル・チャンCEOに承継する」と明かした。
マー会長は「本日からチャンCEOと全面的に協力し、我々の組織の過渡期のための準備を行う」と、「2019年9月10日以降も、私は2020年のアリババ株主総会までは依然としてアリババ理事会の構成員としての身分を維持する」と付け加えた。また「私は沈思熟考しながら、真摯にこの10年間引退する準備をして来た」と、「(私の退任は)アリババが全面的に特定個人の能力に依存する会社から、人材に依存する企業へとアップグレードする事を意味している」と強調した。
■オーナー経営を越えて、再跳躍誓う
来年55才になるマー会長の早期退任は‟意外”だ。マー会長が率いるアリババは、「百度(バイドゥ)」、「Tencent(テンセント)」、「JD.com(JDドットコム)」などとともに、中国を代表するインターネット企業。これらの企業を創業し、率いて来た経営者世代の中で、マー会長の様に早期に退任する例は初めてだ。
これについてマー会長退任の背景が注目されている。マー会長の決断は、グループ内の支配構造と意思決定システム及び人的資産管理に一大改革を吹き込む意志だと考えられる。
マー会長は中国を代表するIT企業BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)のひとつであるアリババ設立を主導し、巨大グループに育て上げた張本人。マー会長は同僚17人とともに、1999年に浙江省の省都杭州にある自身のアパートでアリババを創業した。初期には企業間(BtoB)取引を重視していたアリババが、企業対個人(BtoC)取引プラットフォームの「淘宝(タオバオ)」に事業の中心を移すと、会社は急速に成長した。その後アリババは「Alipay(アリペイ)」を発表し、中国の電子決済市場を席巻した。それ以降も人工知能(AI)やエンターテイメントなど多様な分野に進出している。
しかしグループを世界的なレベルに引き上げるには、既存のマー会長の意思決定に依存する、ワンマン・オーナー中心の支配構造を壊さなければという点が、マー会長の決断に影響を与えたとみられる。
実際にアリババは中国国内市場で支配的な地位にあるものの、世界に進出するにあたっては難題に直面している。アリババの年間売上は2500億元(約4兆520億円)に及ぶ。インドや東南アジアで電子商取引やインターネット金融に投資して存在感を高めているものの、巨大な中国市場の恩恵を除くと、先進国市場でも通じる競争力には足らないとの評価。更に米中貿易戦争に加え、中国政府のインターネット統制政策など、対外環境もさほど良い状況にはないのが現状だ。
翻訳:水野卓
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