FRBパウエル議長が再びハト派に戻った?「FRB政策金利は中立の僅かに下」
FRBパウエル議長が再びハト派に戻った?「FRB政策金利は中立の僅かに下」
‐金利引き上げのスピードを弱める可能性を示唆した?…ニューヨーク株式市場急騰
‐事前に決められた政策は無い…今後発表されるデータを注視
‐パウエル議長の10月の発言と大きな差…当時は「中立金利までの道のりは長い」
‐12月の金利引き上げは予定通りに進められるとの展望
‐FRB金融安定報告書、一部の米国企業の負債増加を憂慮
米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は28日、FRB政策金利が中立水準に近付いたと発言した。
パウエル議長の同発言は、「中立金利まではまだ道のりが長い」と話し、市場に衝撃を与えた10月のコメントから大きく変わったもので、FRBの金利引き上げのスピードを調整する可能性を示唆したと市場では判断するようだ。同発言を受けて、ニューヨーク株式市場はFRBの金利引き上げの回数が減るという期待感に、激しい上昇ラリーを繰り広げた。
パウエル議長はそれでも、FRBが来月の政策会議で金利を引き上げるという、市場の予想を変える程の言葉は発しなかった。デリバティブ取引所を運営するCMEグループによると、この日の午後、金利先物市場は、FRBが来月19日と20日の政策会議で金利を2.25〜2.50%と0.25ポイント上げる可能性を価格に反映しているといる。
フィナンシャル・タイムズやウォール・ストリート・ジャーナルなど複数のメディアによると、パウエル議長はニューヨーク経済クラブの講演で、「金利は歴史的な基準によれば依然として低い」と指摘している。また「そして金利は経済に中立的、すなわち成長を加速させも、鈍化させもしない水準だと推計される、広い範囲の僅かに下に留まっている」と述べた。
グローバル金融市場のみならず、世界各国の経済政策決定者らが注視するこの日の演説で、パウエル議長は「FRBは金利水準に関して事前に決められた方針は無く、代わりに経済及び金融の状況の変化を元に政策を決定する」と話した。更に、「今後発表予定の経済や金融データが私達に語り掛けることを非常に注意深く見守る」と、「常にそうであった様に、私達の通貨政策決定は、変化する雇用とインフレ展望という観点から、経済が軌道を維持する様にデザインする事だ」と述べた。
米メディアは、パウエル議長のニューヨーク経済クラブでの講演は、今年2月のパウエル議長のFRB議長就任以後、FRBから発せられた最も重要なメッセージだと評価している。米経済チャンネルCNBCのパーソナリティーを務めるジム・クレイマー氏は、「パウエル議長は世界的な成長鈍化を目撃しており、成長鈍化が私達に被害を与える物である事を知っている」と、パウエル議長の見解が大きく変わったと解析した。
中立金利に対するパウエル議長の立場の変化は、他のFRBメンバーの最近の発言により、十分に予想されていた。先だって、リチャード・クラリダFRB副議長とアトランタ連邦銀行のラファエル・ボスティック総裁は、FRBが中立金利に非常に近く接近したという意見を相次いで発した。
フィラデルフィア連邦銀行のパトリック・ハーカー総裁も2週前、自身は12月の政策会議で金利引き上げを支持する準備が出来ていないと話した。米国の金融調査大手エバーコアISIのグローバル政策及び中央銀行首席ストラテジストのクリシュナ・グハ氏ら、市場のストラテジストらは、「パウエル議長のニューヨーク経済クラブでの演説はFRBが通貨政策に対する立場を柔軟に変えて行く過程の延長線になるだろう」とみている。
パウエル議長の金利引き上げのスピードを調整する可能性の示唆にも関わらず、経済に対するFRBの全般的な評価は依然としてポジティブである事が現れている。パウエル議長は、「経済は堅固な拡大の流れを見せており、今現在インフレの危険性はほぼ目撃されていない」と話している。また、「一部資産のバリュエーション(評価価値)が高いものの、金融システム内部の全体負債は『非正常的であったり、過度な水準』ではない」と指摘している。
しかしパウエル議長のニューヨークでの発言に先立ち、FRBはこの日初めて公開された半期金融安定報告書では、一部企業の高い負債水準、貿易摩擦、地政学的リスクを経済の危険要因として指摘した。
パウエル議長は、FRBの金利引き上げに不満を抱いている、ドナルド・トランプ米国大統領の度重なる非難に対しては直接言及を避けたものの、「FRBのこれまでの通貨政策は適切だった」と主張した。
フィナンシャル・タイムズは、「トランプ大統領の圧力がFRBの政策に影響を及ぼすと考えている投資家はいないだろう」と報じている。
翻訳:水野卓