「貨物船問題」…動揺見える北朝鮮、挑発の名分に利用か

「貨物船問題」…動揺見える北朝鮮、挑発の名分に利用か

-米国による貨物船差し押さえに、北朝鮮が過剰に反応
-主たる外貨獲得手段の遮断は体制維持への負担に
-「統治資金」尽きれば体制維持も難しく
-挑発効果高めるために名分集め、今後を伺うか?

米国が対北制裁に違反した北朝鮮の貨物船を差し押さえ、北朝鮮も返還を求め国連などの国際社会に対し外交戦を繰り広げるなど、米朝間の神経戦が熾烈になっている。この様な中、北朝鮮は余裕を見せる米国に比べ、かなり動揺した様子を見せており、今後どの様な展開を見せるのかに関心が集まっている。

米国務省は21日、差し押さえられた貨物船の返還を求める北朝鮮の要求を一蹴した。また「国連レベルでの対北制裁の維持が必要で、加盟国も同様に制裁をしっかりと履行しなければならない」と、制裁の隙を狙った違法な外貨獲得を試みる北朝鮮に、更に圧力を掛ける事を示唆した。

米国は、北朝鮮が今月4日に続き、9日にも再びミサイル挑発を行うと、その僅か9時間後に対北制裁違反の疑いを受けていた北朝鮮の貨物船「ワイズ・オネスト号」を差し押さえ、静かに、かつ速やかに対応した。米国務省は動揺する北朝鮮とは違い、この日も対話のドアは開いているとして、余裕のある姿を見せた。

一方の北朝鮮は、貨物船差し押さえの一件以降、返還を強く主張し、僅かな間に外務省の報道官を通じた対米非難(14日)、米国が北朝鮮の主権を侵害しているとの国連総長に宛てた親書の発送(17日)に続き、この日もキム・ソン北朝鮮国連大使が記者会見を開き、「差し押さえは違法」だと、返還を強く主張した。

北朝鮮は切羽詰まった様子を見せ、既に国際世論戦まで繰り広げているものの、差し押さえを実行し、対北制裁が堅固に維持される必要がある事を米国務省が改めて確認しており、北朝鮮が望んでいる結果が得られる可能性は低いとみられる。

今回差し押さえられた北朝鮮の貨物船「ワイズ・オネスト号」は北朝鮮で2番目に大きく、35億ウォン(約3億2400万円)以上の価値がある石炭を当時積んでいたと伝えられている。米国によるワイズ・オネスト号差し押さえは、北朝鮮に対する米国の制裁圧力が更に強まるとのシグナルになる可能性もある。

「史上最高レベル」とされる現在の対北制裁により、北朝鮮は外部と断絶された状態のまま孤立している。自力更生と友好国の支援で耐えられたとしても、体制維持のためには現金が必須。北朝鮮の立場では、外貨獲得の中心部に米国のメスが入ったことになり、今回の事態と今後の展開を注視しなければならない事態だ。

最近、対北制裁の影響で、北朝鮮の主な外貨獲得の窓口だった海外出稼労働者らも続々と帰国している。この様な中で、米国による直接的な圧力が強まれば、資金の調達が難しくなり、これによる現金の不足が北朝鮮の体制の中心にいるエリート層の離反を加速させる可能性もある。これは北朝鮮の立場としては、深刻な問題だ。

金正恩北朝鮮国務委員長は先月13日、最高人民会議で、3回目の米朝首脳会談を年内に開催すべきだと話した。以後、米国がこれと言った反応を見せないでいると、2度に渡るミサイル挑発を行ったものの、期待していた成果とは違い、結果的に更なる動揺を招く結果となってしまった。

対北制裁の手綱を握っている米国に対し、今後北朝鮮がどの様な対応を取るのかは未知数だ。専門家らは、北朝鮮が窮地に立たされたとしても、これまでの様に非核化交渉のテーブルをひっくり返す可能性は低いが、時間を置いて追加の挑発には出るだろうとみている。

峨山(アサン)政策硏究院のシン・ボムチョル安保統一センター長は、「外貨獲得に手をつけた今回の船舶差し押さえは、北朝鮮の政権にとっては、明らかに大きな挑戦になる可能性がある」と、「今回の米国の措置に対し、北朝鮮は”米国の圧力によりどうする事も出来なかった”と、追加の挑発への名分を集めるだろう」との分析だ。

同センター長は、「ただし、2度に渡るミサイル挑発があっただけに、すぐに追加の挑発を行うには効果が少なく、また挑発の効果を高めるには費用もかかるため、下半期に開かれる米韓軍事演習の様な、注目度の高いイベントをきっかけにして、挑発に出るのではないか」と話した。

翻訳︰水野卓

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