[ワールドレポート] メイ首相の涙とイギリスの先行き

[ワールドレポート] メイ首相の涙とイギリスの先行き
イギリスのテリーザ・メイ首相が今月7日、首相と与党党首から辞任した。2016年6月、国民投票でブレグジット(英国のEU離脱)を決定してから3年余りが経過したが、未だに決着をつけられずにいるためだ。メイ首相は、歳月だけを無駄にしたという批判を免れることはできなかった。
ブレグジットをめぐり辞任に追い込まれたデーヴィッド・キャメロン前首相から政権を引き継いだメイ首相。2016年7月13日、そのリーダーシップへの期待から圧倒的な支持を受け、マーガレット・サッチャーに続き英国で二人目の女性の保守党党首かつ第76代首相に就任した。
めったに感情を表すことがなく「メイボット」とも呼ばれていたメイ首相だが、先月末に辞任の意向を明らかにした際には涙を浮かべた。メイ首相は「自分なりに最善は尽くした。しかし、結果には繋がらなかった」と悔しさを滲ませた。ニューヨークタイムズ(NYT)は「2016年7月、混乱を極める状況の収束を図りダウニング街へやって来たメイ首相だが、残念な結果に終わってしまった」と伝えた。
同紙は「メイ首相が月日を費やしEUと交渉した離脱協定は議会で何度も否決され、国家は以前よりもさらに分裂することとなった。政治もメイ首相を後ろ盾する余裕がなく、関心はすぐ次へと移っていった」とした。続けて「ブレグジットが遅々として進まないこの状況は全面的にメイ首相の過ちなのか、はたまた最初から不可能な任務を押し付けられただけなのか、しばし考えてみる必要がある。メイ首相が非難から逃れることは難しい、大事な局面での優柔不断さが目立ってしまった」と評価した。
メイ首相に代わる新しい保守党党首の選定は、今月13日に初投票が行われ7月26日まで行われる見通しだ。出馬を表明したのはボリス・ジョンソン前外相、マイケル・ゴーヴ環境相、ジェレミー・ハント外相など10名。中でもブレグジット強硬派のボリス・ジョンソン前外相が最有力視されている。ジョンソン氏は、交渉なしでEUを離脱する「合意なきブレグジット」も辞さない構えを見せており、最近も10月31日までにはEUを離脱すると発言したばかり。
しかし、こうした強硬姿勢に反発する声も少なくない。ファイナンシャルタイムズ(FT)は「第一野党である労働党をはじめ、保守党内にも彼を懸念する議員は多い。ジョンソン氏が党首に選ばれれば、直ちに不信任投票が行われる可能性もある」と伝えた。
次期首相も決まらない中で、既に不信任投票が論じられるという先行き不透明な状況ではあるが、英国の今後を左右する決定を下す時が来たようだ。
翻訳者:M.I
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