米テスラ、株非公開化検討…空売り勢力に対抗するマスク氏
米テスラ、株非公開化検討…空売り勢力に対抗するマスク氏
-連続赤字で空売り勢力の標的に
-市場は株式買い付け費用に疑問
変わり者とも天才事業家とも呼ばれる米国の実業家イーロン・マスク氏が、自身が保有するEV専用自動車メーカーのテスラの株式を非公開化し、非上場企業に転換する計画を明らかにした。短期収益にのみ注目する株主のため、長期的に企業を育てる事が難しいとの理由からだが、市場では赤字企業を率いるマスク氏がどこから株式買い付け費用を調達するのかと、冷たい視線を送っている。
テスラと民間宇宙企業スペースXの最高経営者(CEO)を兼ねているマスク氏は7日、自身のツイッターに「テスラを1株あたり420ドルで非上場企業にする事を検討中だ。資金は準備できた」と記した。
米国ナスダックに上場しているテスラの株価は、マスク氏のツイート直前の1株363.54ドルから、ツイート後には371.07ドルに跳ね上がり、この日の終値では前日比で11%高の379.57ドルを付けた。
■7四半期連続赤字
マスク氏は全職員に宛てたメールで事情を明らかにしている。マスク氏は「テスラは上場企業になった後、急激な株価変動を狙った勢力の標的となり、この様な価格変動は自社株を持つ全てのテスラ職員の集中の妨げとなる要因だった」と主張した。
また「更にテスラは上場企業であるため、四半期ごとに収益を創出しなければならず、この事はテスラが今四半期には適切かもしれないが、長期的にはそうでない決定を下すしかない大きな圧力になっている」と指摘した。
同氏はテスラがより長期的な視点で運営されなければならないと、非上場企業であるスペースXの方がテスラより遥かに効率的に運営されていると強調した。更に「今後、テスラの成長速度が遅くなり、より予想可能な成長を見せる様になれば、再び上場する可能性もある」と述べた。
2010年に上場したテスラは、度重なる赤字と不透明な先行きにより、保有していない株式を借りて売り、その株価が下がれば利益を得られる、いわゆる空売り勢力の標的になっていた。多国籍市場調査会社IHS Markit(IHSマークイット)によれば、現在市場で取引されているテスラ株の27%が空売りされていると見られる。
更にテスラが今年の第2四半期まで7四半期連続の赤字となるや、一部株主が4月にマスク氏に対するテスラ理事会議長からの退陣を要求した事もあった。マスク氏は昨年11月のインタビューで「株主がテスラを非効率にしている。テスラを非上場企業にしたい」と話した。
■株式買い付け費用は不透明
市場ではマスク氏がどこから資金を得るのかという反応を見せている。現在、テスラ株式のマスク氏と内部関係者の保有率はそれぞれ20%と5%に過ぎない。残りの内の12%は個人投資家で、62.2%は機関投資家が保有している。テスラの時価総額はマスク氏が提示した1株あたり420ドルで換算すると、720億ドル(約8兆円)となる。
ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は、テスラは第2四半期に過去最悪の赤字となっており、マスク氏がどこで買い付け費用を工面するのか不透明だと分析している。モルガン・スタンレーのアナリスト、アダム・ジョナス氏は7日、投資家への報告書でテスラが第3四半期に「モデル3」の生産を50%増やしても、第4四半期までで最大25億ドルの資本しか増やせないと予測した。
一方、マスク氏は今回の発表で、非上場化の過程に参加する株主は株式売却の可否を自ら選択出来る事、テスラとスペースXは合併しない事を約束した。同時に自身の株保有率を増やさない事も宣言した。
翻訳︰水野卓