トランプもラガルドも空振り…欧米の株式市場大暴落

ニューヨークやヨーロッパの株式市場は現地時間12日、10%台の大暴落となった。ニューヨーク株式市場の3大指数は全て弱気相場へと転換した。

米FRBのジェローム・パウエル議長もECB(ヨーロッパ中央銀行)のクリスティーヌ・ラガルド総裁も市場救済に失敗した。特にヨーロッパ市場はECBの通貨政策の緩和が期待に大きく及ばなかった事と、ラガルド総裁が記者会見で発言ミスをした事で過去最大の下げ幅を記録した。

ウォール・ストリート・ジャーナルやフィナンシャル・タイムズなどの海外メディアによるとこの日、米FRBは1兆5000億ドル(約157兆円)以上を市場に緊急投入する事を決定し、ECBも債券買い入れを増やすとしているが、大暴落を防ぐ事は出来なかった。

■ニューヨーク市場3大指数は全て弱気相場へ転換、ヨーロッパ市場は過去最大の下げ幅

前日既に弱気相場に転換していたニューヨーク株式市場のダウ平均株価指数は、この日も10%近い下げとなり2万1200ドルのラインまで下がっている。また弱気相場への転換寸前だったS&P500指数とナスダック指数もこの日、共に9.5%前後下落して完全に弱気相場へと転換した。

この日の下げ幅は株価指数が22%暴落した1987年10月22日のいわゆる「ブラック・マンデー」以来最大の下げ幅となった。これは2008年の世界金融危機当時より下げ幅が大きかった事を意味する。

これより先に取引を終えていたヨーロッパの株式市場は10%以上の暴落で過去最大の下げ幅を記録した。

ECBは銀行に貸し出す金利を下げ、債券の買い入れを拡大するなど市場安定に向けた対策を打ち出したが、期待されていた金利引き下げが無かった事と、ラガルド総裁が通貨政策会議後の記者会見で発言ミスをした事もあって、株式市場が暴落したとみられる。

ドイツDAX30指数やフランスCAC40指数は12%以上暴落し、英国FTSE100指数も11%近い急落となった。ラガルド総裁の発言に最も大きな影響を受けたイタリア市場のFTSEイタリア全株指数は16.4%の暴落。これらは全て過去最大の下げ幅となっている。

ヨーロッパの市況を反映するストックス欧州600指数も1987年のブラック・マンデー以降最大の11.5%の暴落となった。

ECBが国債の買い入れを拡大するとはしたものの、イタリアやスペインなどの国債利回りは急騰している。

イタリア国債とドイツ国債、それぞれ10年物の利回り差は昨年6月以降で最も開いた2.6%超となっている。イタリア国債の価格は1日基準で過去最大の下げ幅を記録した。

■生ぬるい対応とリガルド発言

市場ではECBがこの日の通貨政策会議で、2008年の金融危機レベルに次ぐ大々的な資産買い入れと、政策金利引き下げに動く事を期待していたが、ECBの対応はこれら期待に沿うものではなかった。

ECBは債券買い入れの規模を1200億ユーロ(約14兆円)に拡大し、銀行に低い金利で資金を貸し出すプログラムを開始する。また既存の銀行貸し出しは多少緩和された条件を適用すると発表した。しかし期待されていた金利引き下げは無かった。

更にリガルド総裁は通貨政策会議後の記者会見で大きなミスを犯した。

マリオ・ドラギ前総裁の「全ての手段を動員する」という方針を自分は取らないだろうと釘を差した。ドラギ前総裁は2012年のユーロ圏(ユーロ使用19ヶ国)債務危機当時、この発言により市場心理を安定化させてユーロ圏を救ったとの評価を受けている。

ラガルド総裁は「何でもする。シーズン2は無い」と、ドラギ前総裁のやり方を続ける考えは無いという点を強調した。

この発言は大々的な通貨緩和を望んでいた市場に冷水を浴びせた。

ラボバンクのストラテジスト、リチャード・マグワイア氏は「市場は2008年同様の対応を期待していたが、ECBは自らがコントロールタワーではないという印象を与えてしまった」と、ラガルド総裁の記者会見が逆効果になったとの指摘だ。

またラガルド総裁は、イタリアやスペインの国債とドイツ国債の利回りスプレッド拡大に関する質問にも、利回りスプレッドを狭めるのはECBの任務ではないと釘を差し、債券市場を動揺させた。

ラガルド総裁は慌ててCNNとのインタビューを行ない火消しに動いたが、状況を変える事は出来なかった。

この日の記者会見で、「新型コロナウイルスによる衝撃を緩和させるためには通貨政策より財政政策が何より重要だ」と、ユーロ圏各国政府の財政拡大を引き出そうとしたラガルド総裁の思惑は、全て不発に終わってしまった。

ラガルド総裁の発言は「災いでしかない」や「ひど過ぎる」との批判を受けている。

■トランプ氏も不発

ニューヨーク株式市場は、今月3日の0.5%の電撃金利引き下げと、この日の1兆5000億ドル以上を市場に投入するとのFRBのパウエル議長の発言にも反応せず、大幅下落から抜け出す事は出来なかった。

これは前日のトランプ大統領のホワイトハウス執務室での緊急記者会見への失望感が市場を支配したためだとみられる。

市場が待ち望んでいた大規模財政政策の代わりに、議会同意が必要な「年末までの給与所得税の免税」という消極的な政策を改めて打ち出した事で、不安な投資心理に冷水を浴びせてしまった。

市場ではトランプ大統領が新型コロナウイルスによる衝撃を緩和させるための財政政策の責任を議会に押し付けただけに過ぎないとの評価もみられる。

これにより、3ヶ月間続く5000億ドル相当のレポプログラム2つと、1ヶ月間続く5000億ドル相当のレポプログラム1つの、計1兆5000億ドル規模の大規模資金投入計画をFRBが発表したものの、市場はFRBの発表時に暫し下落を止めただけで再び大幅に下落した。

この日のニューヨーク株式市場は取引開始から大幅な下落で始まり、直ぐに取引が15分間停止となるサーキットブレーカーが再び発動した。

翻訳:水野卓
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