サウジ原油増産強行…産油国による資源主導権争い触発

国際原油価格がブレーキの無い列車の如く下落局面に陥っている。
AFP通信によると現地時間30日、サウジアラビアが5月より原油輸出を日量60万バレル増やすと発表した。サウジアラビアが原油市場が崩壊しているにも関わらず予定通り原油輸出の拡大を強行する事により、原油価格1バレル=20ドル線の崩壊も秒読みとなった。また産油国間での激しい増産競争により、米国が2年振りに最大産油国の座を明け渡す事になれば、原油を取り巻く産油国間での「資源主導権」争いも更に激しくなるとみられる。
■原油価格1ケタ台まで下落憂慮
国際原油価格は、新型コロナウイルス感染拡大による需要急減、3月初めの減産合意失敗によるサウジアラビアとロシアの間での価格戦争が加わり、底の見えない下落を続けている。
国際原油価格の基準物となる北海ブレント油はこの日、先週末より8.7%暴落した1バレル=22.76ドルで取引を終え、2002年以来の最安値を記録した。
米国原油価格の基準物となるWTIは1.42ドル(6.6%)急落した1バレル=20.09ドルで取引を終えている。これは2002年2月以来の安値。取引時間中に下げ幅が9%を超え、19.27ドルまで下げて20ドル線を割る場面もあった。3月20日にも一時20ドル線を割り込んだが、再び抵抗線を下回った。
フィナンシャル・タイムズによると、米国原油価格の中でもテキサス州ミッドランドで生産された原油はこの日、一時1バレル=7ドルで取引された。
市場の専門家らは直に10ドル台に、一部では1ケタ台の原油価格になると予想している。
■貯蔵施設不足も原油価格に重荷
新型コロナウイルスによる移動制限や経済活動の大幅な縮小により原油需要が大幅に減少しているにも関わらず、サウジアラビアやロシアなどが産油量拡大に動いている事で供給過剰になるというのが原油価格暴落の背景。
需要減少幅はOPEC加盟13ヶ国全体の産油量に匹敵する。
IEA(国際エネルギー機構)によると、新型コロナウイルスの影響で世界の原油需要は最大25%減少した。1日の原油需要規模が1億バレルだった事を考えると、1日で最大2500万バレルの需要が減少した事になる。これはOPECの1日の産油量、米国・メキシコ・カナダの1日の原油需要に匹敵する規模。2008年の世界金融危機当時の原油需要減少幅の6倍の規模となる。
有り余る原油は油類貯蔵庫に直行している。アナリストらは世界の原油貯蔵能力が限界に達した場合、原油価格は更に下落すると憂慮している。
IHSマークイットの副会長でエネルギー専門家のダニエル・ヤーギン氏は、追加の貯蔵空間が確保出来なければ、原油価格は更に下落すると、原油市場は4月以降相当な困難を経験するとみている。
一部専門家らは原油貯蔵施設が確保出来ず、原油需要が引き続き振るわなければ、2008年の世界金融危機の際と同様に、原油タンカーを原油貯蔵庫として活用する苦肉の策が取られるだろうとみている。
■米国が最大産油国の座を受け渡す時
サウジアラビアやロシアなどに比べ、生産費が相対的に高い米国のシェールオイルは、原油価格暴落と需要不足による貯蔵施設の飽和という2重苦に陥っている。これにより油井が相次いで稼動を停止している。
UAEのドバイに本社があるエミレーツNBD銀行によると、最近2週の間に59の油井が生産を止めている。
米国のシェールオイル企業は原油価格暴落の中、予算の大規模削減や資本支出の保留、減員などの動きを見せている。
エミレーツNBDの商品アナリスト、エドワード・ベル氏は「米国が年内に世界最大の産油国の座を受け渡す事になるのは確実だ」と、「その時期は予想より早く訪れるかもしれない」と話した。
同氏は油井の稼動停止により、第2四半期から米国の原油生産量が日量75万バレル減少、年末には日量1300万バレルの減少となってサウジアラビアとロシアの産油量を下回るとみている。
翻訳:水野卓
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