1976年、江原道春川生まれの俳優チョン・ヒョンソクは、演劇舞台からスタートし、テレビドラマや映画へと活動の場を広げてきた。成均館大学法学科に在学中、演劇に魅せられて中退し、2003年『リア王』のオルバニー役でデビュー。現在は江原・華川を拠点に、公演創作集団「ッティダ(뛰다)」で児童劇から大人向け作品まで幅広く活動している。SBSドラマ『胸部外科-心を盗んだ医師たち』(2018)、『ドクター・ヨハン』(2019)、そして2025年公開予定の映画『神明(신명)』では神父役を演じ、舞台・ドラマ・映画を行き来しながら着実にキャリアを積み重ねている。近年はFacebookやInstagramを通じて観客と積極的に交流している。

Q1. 2003年『リア王』のオルバニー役でデビューしました。初舞台で最も印象に残っている瞬間は?
A1. 初舞台の時は本当に頭が真っ白でした。大学の劇団活動では観客の前に立った経験がありましたが、プロの舞台で客席に立つというのは全く違う重圧でした。緊張しやすい性格なので、心臓が喉から飛び出しそうなほどでした。ただ、「この作品に貢献したい」という気持ちだけで懸命に演じていました。振り返ると、緊張そのものが当時の自分を象徴していたように思います。
Q2. 法学から演劇へ進路を変えたきっかけと、周囲の反応は?
A2. 新入生の時に友人に誘われて成均館大学演劇芸術研究会(성균극회)に入ったことが始まりでした。演劇を通して人との関係の築き方、仕事に向かう姿勢、社会を見る目など多くを学びました。演劇が自分の人生を導いてくれると思い、俳優を志しました。
一方で、父は私に法曹界の道を期待しており、当時家の訴訟問題もあって法への失望が強く、俳優を志すことに大反対でした。しかし公演を続ける中で舞台を見せ、次第に理解を得ることができました。友人たちは私の性格を知っていたので、皆応援してくれました。


Q3. 演劇舞台で得た最大の訓練効果と、同時に背負うリスクは?
A3. 初めの頃は「上手くやる」ことだけを考えていましたが、ある時から「なぜ自分は上手くできないのか」と悩み始め、演技が苦しくなりました。そんな時に道化(クラウン)ワークショップや瞑想などを通じて、「今ここにあるものを受け入れ、反応することが演技の始まりだ」と気づきました。そこから演技が一変しました。
リスクとしては、長期公演になると「形式だけが残り、中身がなくなる」こと。形だけ整っていても生命力が失われる“マンネリ”が最大の敵です。
Q4. 『胸部外科』撮影時に印象的だったシーンや、共演者との協働について。
A4. 手術室のシーンが多く、1日中、長い時は3日間も撮影することがありました。閉鎖的な空間で長時間撮影するうちに、共演者やスタッフと“戦友”のような絆が生まれました。昼食時間に意見を交わしながらチームワークがどんどん良くなっていったのを覚えています。
医師や看護師が現場で助言してくださり、リアリティのある場面づくりに集中した結果、短いシーンの中に強い臨場感を生み出せたと思います。
Q5. 医療ドラマ出演時のリサーチや技術的準備は?
A5. 『胸部外科』では体外循環士ユ・セファン役でした。実際の手術室を見学し、体外循環装置(人工心肺)の操作を学びました。落ち着いた医師たちの手際や緊張感に圧倒されました。実際の技師の方に操作原理や注意点を直接教わり、手の動きまで体得しました。


Q6. 映画『神明』の神父役を構築するにあたり、実在モデルや取材は?
A6. 実在のモデルは「正義具現司祭団」のパク・ジュファン・ミカエル神父です。台詞も実際の演説内容を短縮したもので、リアリティを重視しました。私はカトリック信者で、幼い頃に神父の横でミサ補助をした経験があり、その所作が役作りに大いに役立ちました。観客が「現実の教会とは違う」と感じないように細部まで意識しました。
Q7. オカルト政治スリラーというジャンル性をどのように演技に落とし込んだか?
A7. 撮影スケジュールが非常にタイトで、役作りを十分に練る時間がありませんでした。現場で監督や共演者と即興的にリハーサルし、感情を共有しながら作り上げていきました。ジャンルよりも、その場でキャラクターが感じる“瞬間のリアリティ”に集中しました。





Q8. 舞台・映画・ドラマの中で今の自分に最も合う媒体は?
A8. どれも魅力的ですが、最近は映画が特に好きです。監督や俳優同士で深く議論し、完成した映像にそれが反映された瞬間の高揚感は格別です。今後も映画を中心に多様な作品でお会いしたいです。
Q9. 台本分析からリハーサルまでのルーティンは?
A9. まず速読で全体を掴み、自分の登場シーンの感情や目的を整理します。その後、人物の性格・動き・姿勢を分析します。演技の幅を広げるため、同じ台詞を真逆の感情で試したりもします。撮影前は呼吸法と瞑想で心を落ち着かせ、緊張を“受け入れる”ことを意識します。
Q10. 倫理的ジレンマを持つキャラクターを演じる際の基準は?
A10. 悪役を演じる時は、その行為の“欲求”に集中します。理解できない欲望は別の形(例えば暴力を支配欲に)へ置き換え、内面の必然性を構築します。人間の根源的な欲求を理解することが、説得力ある演技につながると思います。
Q11. 共演者との呼吸を合わせる秘訣は?
A11. 相手の言葉を“本当に聞く”こと。相手の表情や声のトーンに集中すれば、自然に自分の反応も生まれます。準備した演技を押し通すのではなく、相手から受け取るエネルギーに身を委ねます。
Q12. 公演創作集団「ッティダ」での経験が現場感覚に与えた影響は?
A12. 一流の芸術学校出身者が集まった集団で、演技・身体訓練・即興・音楽など多面的にトレーニングしました。特にロシアの俳優・演出家ミハイル・チェーホフのテクニックを通じて、「動きから人物をつくる」演技法を学びました。これが今の自分の基礎を作っています。
Q13. 長期的に活動するための体力・メンタル管理法は?
A13. 特別な方法はありませんが、瞑想と呼吸法で心の安定を保っています。オーディションに落ちた時などは「20回挑戦して1回成功すればいい」と考える“20枚スタンプ理論”で気持ちを立て直します。失敗も経験の一部だと思うようにしています。




Q14. キャリアの転機となった作品は?
A14. 演劇では2005年の『ハルク物語』が転機でした。この作品で「ッティダ」と出会い、俳優としての基礎を築けました。
ドラマでは『星から来たあなた』が印象的です。この作品で記者役を演じて以降、さまざまな作品で記者役を多く演じました。
映画では北朝鮮の労働団練隊を扱った独立映画『香美(향미)』。初めての悪役で大きな挑戦でした。その監督と後に『1万キロメートル』でも再び組みました。
Q15. 今後挑戦したい役柄、避けたい題材は?
A15. まだまだ演じたい役がたくさんあります。特に“普通の顔をした悪”を演じてみたい。日常に潜む狂気を表現してみたいですね。逆に避けたいというより、感情表現のない“機能的な役”には少し物足りなさを感じます。
Q16. 後輩俳優へのアドバイスは?
A16. 現場を「会社」と思うこと。監督もスタッフも同じ“部署の仲間”だと考えると、関係が良くなり現場が楽しくなります。
絶対にしてはいけないのは「このくらいでいいか」と妥協すること。どんな状況でも最善を尽くすことが、次のチャンスを呼びます。
Q17. SNS運営の原則と、プライベートとの線引きは?
A17. SNSは大切なコミュニケーション手段ですが、プライバシーは極力公開しません。家族情報は控え、作品関連の写真や告知を中心に発信しています。今後はもう少し体系的に運用を考えていきたいです。
Q18. 10年後のチョン・ヒョンソクを象徴するキーワードを3つ挙げるなら?
A18. ^^…
- 大器晩成 – 遅くても努力を続け、より良い演技を届けたい。
- ヤヌス – 一つの顔に二つの表情を持つように、多面性を見せる俳優でありたい。
- 欲張り – 多くの作品で多彩な役に挑戦したい。
ファイナンシャルニュース・ジャパン法人では、俳優チョン・ヒョンソクの活動を今後も日本語で定期的に紹介していく予定だ。演技力の確かな実力派俳優として、日本での活動拡大にも期待が高まる。



俳優チョン・ヒョンソク SNS
Facebook: https://www.facebook.com/hanpada
Instagram: https://www.instagram.com/jeonghyunseok.actor/













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