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食卓の安全を国家の責務に戻せ

日本では「国産農産物は安全で、輸入品にはリスクがある」という思い込みが根強い。しかし実際には、日本の食品安全基準は国際的に見て必ずしも厳格とは言えないとの指摘が続いてきた。国民の健康を守るための法律や制度を整えることは政府の根幹的な役割であるはずだが、その基本が十分に機能しているのか、疑問が拭えない。

日本の伝統的な食事は、醤油や味噌、漬物といった発酵食品、良質なタンパク源である大豆を中心とした、滋養に富むものだった。長い時間をかけて培われてきたこの食文化が、消費者の知らぬ間に損なわれているとすれば、それは個人の問題ではなく社会全体の危機である。

消費者の選択が市場や政治を動かした例は存在する。EUがホルモン処理肉を禁止した決定は、安全性を求める市民の声が制度に反映された象徴的な事例だ。多少高くても安全な食品を選ぶ人が増えれば、流通も政策も変わらざるを得ない。正月に安心しておせち料理を食べ続けるためにも、食の安全への関心と監視は欠かせない。食料の確保が、軍事やエネルギーと並ぶ国家存立の重要な柱であるという認識は、改めて共有されるべきだ。

各地では、学校給食を地元産食材で賄おうとする動きが広がっている。子どもたちに安全なものを食べさせたいという思いは、親だけでなく社会全体の願いであり、賛同する自治体や学校が増えていることは希望の兆しと言える。

食の安全は、価格や嗜好の問題を超え、国民の健康と直結する公共課題である。日本が伝統的な食文化を守り、次世代の健康を支えるためには、基準と制度の見直し、そして消費者の明確な選択が同時に求められている。

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