昨年大みそかに放送されたNHK第76回紅白歌合戦は、第2部の平均世帯視聴率が35%台に回復し、数字の上では一定の成果を示した。一方で、番組構成や出演者の扱いを巡る課題も改めて浮き彫りになった。その象徴的な例が、矢沢永吉と郷ひろみの扱いの差だ。
同じ時代を駆け抜け、現在も第一線で活動する二人だが、紅白で与えられた演出や位置づけは対照的だった。矢沢は特別枠として重厚な演出と十分な尺が確保され、ステージ全体が“レジェンド”としての存在感を強調する構成となった。一方の郷は通常枠に近い形での出演となり、パフォーマンス自体の完成度は高かったものの、演出面では抑制的だったとの声が業界内で広がっている。
芸能関係者の間では、NHKが近年の紅白で「象徴性」と「物語性」をより重視する傾向を強めている点が指摘されている。視聴者に一目で伝わる“時代の顔”や“特別感”を演出するうえで、矢沢のキャリアや生き様は番組側の狙いと合致しやすかったという見方だ。その一方で、郷は長年にわたり安定したパフォーマンスを続けてきたがゆえに、物語化が難しい存在になっているとの分析もある。
この待遇差は、紅白が抱える構造的な問題とも重なる。視聴率回復を最優先するあまり、限られた“見せ場”を誰に集中させるのかという選別が、結果として出演者間の格差を生んでいるという指摘だ。とりわけベテラン勢にとっては、同じ紅白出演でも評価や扱いが大きく異なる現実が、今後の出演判断に影響を与える可能性も否定できない。
紅白は依然として国民的番組であり続けているが、数字の回復だけでは解決できない課題も多い。矢沢永吉と郷ひろみの対照的な扱いは、その現実を象徴する一幕だったと言えそうだ。













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