円安基調が長期化している。外国為替市場では一時1ドル=157円台まで下落し、政府・日銀が防衛ラインとみなす160円に迫る場面もあった。背景には積極財政への警戒感があるが、より構造的な要因として浮上しているのが「円の海外流出」だ。
日本経済はかつて、原材料を輸入し製品を輸出する加工貿易で外貨を稼いできた。だが国内市場の伸び悩みを受け、企業は海外直接投資を拡大。いまや利子や配当などの第1次所得収支が経常黒字を支える構図に変わった。
2025年の国際収支速報では、第1次所得収支は前年比4.7%増の41兆5903億円と過去最大を更新した。一方で、その利益の多くが海外で再投資され、国内に還流しない実態がある。結果として円買い需要は限定的にとどまり、円安圧力が残る。
さらに円安を下支えするのが「デジタル赤字」だ。海外巨大IT企業へのクラウド利用料やオンラインサービスの支払いが拡大し、2025年の赤字額は6兆円を超えた。デジタル分野での対外依存が強まるほど、構造的な円流出が続く。
円安は輸出企業に一定の追い風となる一方、エネルギーや原材料価格の上昇を通じて家計と中小企業を直撃する。日本商工会議所の小林健会頭は、望ましい水準として「少なくとも130円以下」との認識を示している。
高市早苗政権が掲げるのは、国内投資の促進による供給力強化だ。半導体や先端技術、エネルギー分野への投資を後押しし、国内で利益を生み再投資が循環する構造を築けるかが焦点となる。
為替を直接操作することは難しい。問われているのは、国内に資金が循環する経済構造をどう構築するかだ。海外で稼いだ利益を国内成長に結びつけられなければ、円安の構造は変わらない。高市政権の経済運営は、その成否が為替動向に映し出される局面に入っている。













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