米IBMがクラウド事業強化へ、334億ドルでレッドハット買収

米IBMがクラウド事業強化へ、334億ドルでレッドハット買収
米IBMがソフトウェア企業のレッドハット(Red Hat)を334億ドル(約3兆8000億円)で買収する事を28日、発表した。
ウォール・ストリート・ジャーナルやブルームバーグなどの海外メディアは、IBMがクラウド事業強化を通じた復活を期して、創立以来最大規模の企業買収を決定したと報じている。
IBMは、今月26日の株価基準である116.68ドルより63%高い、1株あたり190ドルでレッドハットを現金買収する事を明らかにした。IBMは本年第3四半期末基準で現金147億ドル(約1兆6500億円)を保有している。
今回の合併の主幹銀行は、IBM側はゴールドマン・サックスとJPモルガンとラザードが、レッドハット側はモルガン・スタンレーとグッゲンハイムが務める。
レッドハットは今後、IBMのハイブリッド・クラウド事業部に編入される。レッドハットの現最高経営者(CEO)ジム・ホワイトハースト氏はIBM経営陣に参加し、今後はIBM会長兼最高経営者のジニー・ロメッティ氏に直接仕えると伝えられている。
2012年の就任後、クラウドや人工知能(AI)、セキュリティ・ソフトウェアなどの新規事業を追求してきたロメッティ氏は、「レッドハット買収が画期的な決定になるだろう」と期待を寄せた。
創立107年となるIBMは、ロメッティ氏就任後の再生努力にも関わらず、新規事業者とのハードウェア、ソフトウェア、サービスでの競争で苦戦し、売上高が25%減少した。
レッドハットは創立25年を経過した現在、Linux運営体制(OS)の独歩的な提供企業として成長した。本年第3四半期の売上高は期待に届かなかったものの、本年売上高は初めて30億ドルを超えると予想されており、IBMは今回の買収により、クラウド事業の収益が急速に増える事を期待している。
IBMはレッドハットのLinuxをはじめとしたソフトウェア資産を用いて、今後アマゾンやマイクロソフトのクラウド・コンピューティング・プラットフォームに使用される複合アプリケーション(アプリ)を開発する、企業用ソフトウェア事業者に製品を販売する事が可能となる。
インターナショナル・データ・コーポレーション(IDC)の最高運営責任者(COO)クロフォード・デルプレテ氏は、「レッドハットがこの数年間でソフトウェア開発事業者に無くてはならない企業になった」と、「米IBMの今回の買収は賢明な選択だ」と評価している。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、世界のクラウド・インフラ市場において、米IBMの昨年の売上占有率は1.9%と、トップのアマゾンの51.8%はおろか、マイクロソフトやグーグル、アリババにも大きく離されており、追撃を期さなければならないという課題を抱えていると報じている。
IBMは前四半期に、エコノミカル・インシュアランスやエクソン・モービル、ノービスとクラウド事業契約を締結している。
翻訳:水野卓