カタールがOPEC脱退…原油価額に及ぼす影響は?
‐サウジアラビア主導のOPECを抜けイランとの協力を強化する可能性も
57年の間、石油輸出国機構(OPEC)の会員だったカタールが来年1月にOPECを脱退する。OPECの宗主国サウジアラビアにより、政治・宗教的理由で経済封鎖の対象となっているカタールは、脱退は天然ガスに集中するためであり、政治的な理由は無いと話している。
中東の放送局アルジャジーラなどの海外メディアによると、カタールのサード・アル・カービ・エネルギー大臣は3日、首都ドーハでの記者会見で、2019年1月1日をもってOPECから脱退すると発表した。サード大臣は、「脱退の決定は、天然ガスの生産量を年間7700万トンから1億1100万トンまで増加させる発展計画に集中するため下したもの」と述べた。
サード大臣は、「カタールは過去数年間、国内外で成長と拡大に基盤を置いた未来戦略を開発するため、誠実に努力して来た」と強調した。また、「カタールが世界一の天然ガス生産国としての立ち位置を強化し、維持するための成長戦略を達成するためには、疑いの余地なく努力と専念、献身が必要だ」と説明している。
カタールは世界最大の天然ガス生産国として、全体流通量の約30%を占めており、イランと共にアラビア湾の世界最大のガス田(カタール領ノースドーム、イラン領南パルス)を共有している。カタールはサウジアラビア主導のOPECから脱退する事で、サウジアラビアの影響を受けずにイランとの協力を強化する事が出来る。
これに先立ち、イスラム教スンニ派を代表するサウジアラビアは、昨年6月にカタールがシーア派の宗主国であるイランと交流している点に不満を表し、外交関係と貿易を断絶した。サウジアラビアに続くアラブ首長国連邦(UAE)などの主なスンニ派国家も相次いでカタールと断交した。しかし、海に接しているカタールは周辺国家による封鎖にも関わらず、イランやトルコの支援により自立に成功している。
ただし、今回の脱退決定がOPEC全体の産油量に及ぼす影響は、微々たる物になりそうだ。1961年にOPECに加入したカタールの石油埋蔵量は25億2400万バレルで、これはOPEC加入の15ヶ国中10位、OPEC全体の石油埋蔵量の中の2.1%に過ぎない。また石油生産量は昨年基準で日量60万バレルで、コンゴを除く14ヶ国中11位となる。
OPECは今月6日、オーストリアのウィーンで石油減産の可否を論議するが、カタールには今回の会議が最後となる可能性が高い。なお、OPECの会員国であるエクアドルとガボンは過去に脱退して再び加入した事があり、インドネシアは2008年にOPECを脱退している。
一方、今回のOPEC会議の前に、主要産油国は「原油価格の押し上げのため、減産は必要」との意見に共感する模様だ。今月1日、サウジアラビアとロシアは、アルゼンチン・ブエノスアイレスでの主要20ヶ国(G20)首脳会議期間中に、主要産油国間でのこれまでの減産協定を来年も続ける事でひとまず合意している。細かな減産量はOPEC会議で決定する予定。
この様なニュースにより国際原油価格は一気に急騰し、ブレント油は2日夜、60ドル台を突破した。先月、北海産ブレント油と米国西部テキサス産原油(WTI)の価格は、2008年10月以降最大の22%と大幅に下げていた。
翻訳:水野卓