サウジ…テスラ支援から撤退

サウジ…テスラ支援から撤退

サウジアラビアが保有する米EV車メーカー、テスラの株式の大半をヘッジしたと、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が28日、消息筋の言葉として報じた。テスラCEOのイーロン・マスク氏がサウジの支援を得たと、自社株を個人的に買い入れて非上場企業にすると公言してから、4ヶ月も経たない内にサウジが事実上手を引いた事になる。

消息筋によると、ムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が主導するサウジの政府系ファンド、公共投資ファンド(PIF)は今月17日、JPモルガンチェースなどの協力を得て、保有するテスラ株4.9%の大半をヘッジした。

マスク氏はFT紙に送ったメールで、「数ヶ月間、PIFと連絡を取った事は無い」と、「株式を売却したと考えている。1株でもサウジが保有しているのかは知る由もない」と明かした。

テスラ株をヘッジした事で、サウジは依然としてテスラ株を保有し、経営に干渉する事は可能だが、株価による影響を最小限化して、いつでも手を引ける状態になった。テスラの株価が下落する局面では損失を最小化する事が出来、反対に株価が上昇する局面では保有株の評価額の増加が制限され、当時の株価を基準とした評価額29億ドル(約3170億円)で固定される。

ヘッジは高い費用が付き物となるが、中東・アジア投資家らの間で人気が高い。FT紙によると、PIFは昨年マスク氏にテスラの新株購入の可否を確認し、これを拒絶されると、4月と5月に公開市場で1株あたり300ドル以下の価格でテスラ株を買い入れた。17日にPIFがヘッジした価格は、1株あたり347.26ドルで、評価総額は29億ドルとなる。

サウジのヘッジは絶妙のタイミングだった。サウジがヘッジをした翌日の18日、マスク氏が従業員7%削減とともに「困難な時期」が待っている事を明らかにすると、株価は急落した。サウジのヘッジ後にテスラ株は15%急落し、サウジがヘッジをしたという報道が伝わった28日にも大きく反応した。

サウジはヘッジをした事で、株式の受け渡し無しに利益を確保する事が出来、株価変動にも全く影響を受けないまま、会社に対し影響力を持つ投資家としての立場を守る事が出来る。可能性に対する期待から未だに株式を保有してはいるものの、事実上テスラに対する支持を撤回した事を意味するサウジのヘッジは、昨年8月以降に冷え込んだサウジとマスク氏の関係を如実に表している。

サウジのヘッジは、テスラ株の急騰落の結果だとも言える。テスラ株は、マスク氏のビジョンを信じる投資家らと空売り勢力との戦場になって来た。昨年8月、マスク氏がテスラ株の全株買い付けに関する支持を確保したと明かした際には株価が急騰し、株価下落を見込んでいた空売り勢力は深刻な打撃を受けた。

当時の事の成り行きは劇的だった。サウジがテスラ株の4.9%を確保し、テスラの5大株主の中のひとつになったとの報道が出た翌日、マスク氏はツイッターを通じ、テスラ株の買い付けを経た非上場化計画が最終段階に入ったと述べた。以後、テスラの株価は非上場化の可能性と懐疑論が重なり急騰落を繰り返した後、最終的に米国証券管理委員会(SEC)の調査が入る事態になった。

マスク氏は、サウジが自身のテスラ株買い付け計画を支持していると、「資金は確保した」と自信を持って宣言していた。しかしSECは調査の結果、マスク氏が投資家の支持を確保したと宣言するに値する充分な根拠を持っていなかったと、マスク氏の主張は間違ったものだと結論付けた。マスク氏はこの一件でテスラの会長職から退いている。

翻訳:水野卓

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