
ベネズエラを締め付ける米…最終目標はキューバの没落
米国のトランプ大統領が1月30日、ベネズエラのフアン・グアイド国民議会議長を唯一の合法的な大統領だと再確認し、ニコラス・マドゥロ政権の退陣を強く求めた。米国政界の専門家らは、米国の南米政策が前任オバマ政権の和解政策から冷戦的攻勢に変わりつつあると、また最終目標はベネズエラではなく、キューバの没落だと見ている。
■最終目標はキューバ
米国のサラ・サンダース報道官はこの日、トランプ大統領が「歴史的な大統領職の引き継ぎを祝した。民主主義を復活させるため、またベネズエラの戦いに対する支持を強化するため、グアイド臨時大統領と通話した」と話した。また、「グアイド臨時大統領は、ベネズエラと地域の自由と繁栄のための米国の献身に対し、トランプ大統領に感謝を表した」と、「グアイド臨時大統領は独裁者マドゥロに反対するため、今日と2月2日に行われる全国的な大規模デモの重要性に言及した」とも話している。
グアイド議長は1月23日、マドゥロ大統領は非合法的に就任したとして、自らを臨時大統領だと宣言した。米国政府はこの宣言直後に、グアイド議長を合法的な政府の首班だと認定した。
米国がこの様にベネズエラの内政に介入する理由は、民主主義復活の様な純粋な目的からではない。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は30日、米国政府関係者の言葉を引用して、「トランプ政権はキューバ、ベネズエラ、ニカラグアの南米3大左派政権を、特にキューバを無力化するため、ベネズエラから手を付けた」と指摘した。
オバマ政権時代には、半世紀を超すキューバ抑制策が失敗だったと判断し、和解策を選択したが、トランプ大統領は違った様だ。就任直後からキューバ制裁復活を進めていたトランプ大統領は、ベネズエラで起こった混乱を利用し、まずはキューバの資金源を絶つという戦略を選んだ。WSJ紙は、キューバ政府がベネズエラの軍部と密接な関係にあり、ベネズエラがキューバに事実上無償で石油を供給していると説明している。
かつてバスの運転士だったマドゥロ大統領は、若くしてキューバに渡り、キューバで共産主義政治の勉強をした後に、本格的に政治活動を始めた人物で、キューバとの縁が深い。米国政府は昨年11月、24ヶ所以上のベネズエラとキューバの政府関係組織に経済制裁を加えた。また、マドゥロ大統領が麻薬組織を作り、世界中の反米組織を支援していると見ている。
■混乱続くベネズエラ
米国の支援を得たとはいえ、政治的な実権が無いグアイド議長は、街頭での活動を中心にマドゥロ政権に圧力を加えている。1月30日、ベネズエラの首都カラカスには、グアイド議長を支持するデモ隊数千人が街に溢れ、マドゥロ大統領の退陣を要求した。グアイド議長は米メディアとのインタビューで、「政局の方向性を握る軍部が徐々に動揺を見せていると、現政権に反旗を翻す可能性もある」と強調した。
しかし実のところ、マドゥロ大統領は絶対に退陣しないとの立場だ。マドゥロ大統領は、デモの当日に公開されたロシアのRIAノーボスチ通信とのインタビューで、「既に昨年5月に合法的な大統領選挙が実施されているので、次の大統領選挙は2025年に行われる予定だ」と主張している。
これに先立ち、EU(ヨーロッパ連合)は1月26日の声明で、マドゥロ政権に前回の大統領選挙で対立候補者を投獄するなどの不正があったため、今後8日以内に改めて大統領選挙を行わなければ、グアイド議長を合法的な政府として認定すると述べた。
これに対してマドゥロ大統領は、「西側の最後通牒は受け入れない」と反発した。
一方、南米でベネズエラの混乱に対して中立を表明したメキシコとウルグアイは、対話の舞台を模索中だ。ウルグアイの大統領室は30日の声明で、2月7日に首都モンテビデオで、ベネズエラ問題に中立的な国家や機構が集まり、会議を開く事を明らかにした。
翻訳:水野卓