世界景気沈滞を嘲笑うかの様に…NY株式市場史上最高値更新

世界景気沈滞を嘲笑うかの様に…NY株式市場史上最高値更新
-「今年の株式市場は厳しい」との専門家の声を打ち消す上昇
-通貨政策緩和基調が影響、主要企業の想定外の好業績も一因
-ファンダメンタルで見ると、持続は難しい可能性も
米国ニューヨークの株式市場が23日、再び史上最高値を記録した。世界景気沈滞と、その余波による米国の成長鈍化、企業業績後退、米中間の貿易戦争など、あらゆる悪材料も史上最高値突破の障害とはならなかった。金利引き上げを続けていたFRBの、通貨政策基調緩和のシグナルが大きく影響したと見られる。しかし専門家らは、現在の様な上昇傾向はファンダメンタルを反映しておらず、持続は難しいと、今後の株価下落に備えなければいけないと警告している。
この日、ニューヨーク株式市場のS&P500指数やナスダック指数は、史上最高値を塗り替えた。市況が最も反映されるS&P500指数は前日比25.71ポイント(0.9%)上昇した2933.68、新興企業中心のナスダック指数は105.56ポイント(1.3%)上げた8120.82で場を終え、それぞれ史上最高値を更新した。
S&P500指数は今年に入って17%の上昇で、1987年以降で最大の上げ幅を記録、ナスダック指数も22%の上昇と、1991年以降で最も高い上昇を見せている。この日、S&P500指数は昨年9月20日の史上最高値を、ナスダック指数は昨年8月29日の史上最高値を、それぞれ塗り替えた。
今年は株式市場にとって厳しい一年になるとしていた専門家らの言葉を嘲笑うかの様に、株価が再び史上最高値を記録した事は、FRBの通貨政策基調変更による通貨政策緩和への期待感に拠るところが大きい。ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズのマイケル・アロー二首席投資ストラテジストは、FRBの通貨政策が緩和に動いた事が「実際に市場を支えている主な要因になっている」と話した。
主要企業が想定外の好業績となった事も、影響を与えたと見られる。SNS企業のツイッターや軍需企業のロッキード・マーティンなどは、業績好調により株価が大きく跳ね上がった。ウォール街の専門家らは、今年の企業業績が前年比で4%の上昇に留まると見ていた。しかし昨年、法人税減免という特殊材料の後押しを受けて企業利益が22%急増した事は、通常時にはあり得ない事であり、昨年と今年の業績を比較する事は無意味だとする認識が大半を占める。ステート・ストリートのアロー二氏は、「昨年の高い業績上昇率は、持続不可能なものだった」と話している。
米中貿易戦争の衝撃に対しても、専門家らと市場は少々違った結論を出している。今月9日にIMFが米中貿易戦争を理由に、今年の世界経済成長率を引き下げた。これは昨年10月以降で3度目の下方修正だったが、市場ではその衝撃よりも両国の貿易戦争終結への期待感に傾いている様だ。
また米国の経済成長率鈍化も、市場では逆に好材料として評価している。たとえ成長鈍化が企業業績悪化に繋がるとしても、その一方ではFRBの金利引き上げ抑制と通貨緩和継続展望を強めるためだ。
専門家らは、そうだとしてもこの様な市場の期待感は危険であると警告している。FRBの通貨緩和政策だけで、株式市場が現在の様な上昇を続けるのは難しいとの指摘だ。
アナリストらは、企業業績が改善されたとしても、既に起きていなければいけなかった株式市場の調整を避ける事は難しいと見ている。ヘッジファンド、バンガードの主席エコノミストは、「市場が今より大幅に上昇するのは難しい」と、「ファンダメンタルで見ると、これを正当化させるのは難しい」と話している。
仮にS&P500指数が第1四半期同様の上昇を続けるなら、今年全体の上昇率は50%を超え、歴代最高記録である1954年の45%を上回る事になる。しかし、世界経済、米国経済鈍化、貿易緊張継続などのあらゆる悪材料を考えると、これは非現実的な予想だ。
RBCキャピタル・マーケッツの米国主席戦略責任者は、「株価上昇が鈍化したとしても、驚いてはいけない」と、「少し前の遅々として進まない上がり方が、今年一年続く株式市場の流れの前兆だと考えれば良い」と話した。
翻訳︰水野卓