安倍氏、米中の「仲裁者」に…トランプ氏とゴルフ会談の日、中国に実務陣急遽派遣

写真はトランプ大統領と安倍総理/首相官邸のTwitterから
安倍氏、米中の「仲裁者」に…トランプ氏とゴルフ会談の日、中国に実務陣急遽派遣
安倍晋三総理と米国のドナルド・トランプ大統領がゴルフと相撲観戦をしていた26日、外務省の実務級官僚らが「静かに」中国・北京へと向かう飛行機に乗り込んだ。
ある外交消息筋は28日、「安倍総理が来月の大阪G20首脳会議(6月28〜29日)で、トランプ大統領と習近平中国国家主席の会談を実現させるため、河野太郎外相の様な大臣クラスの人物を中国に向かわせる案を検討中」とし、「これに先だって、日本政府の実務陣が北京に向けて出発した」と話した。
■米国とは安保、中国とは経済
中国側が大阪での米中首脳会談に否定的な立場を明らかにすると、日本は世紀の貿易戦争と呼ばれる米中貿易摩擦の解決に向け、橋渡し役として直接名乗りでたという事になる。
安倍総理が米中貿易戦争の仲裁者を自任するという事は、直接的には貿易摩擦の長期化により、中国と取引をしている日本企業が打撃を受けるという点があるものの、長期的には安保は米国と共にあるが、経済は中国と手を握るという、ツートラック戦略に起因する。
想定外だった米国のTPP交渉離脱や、トランプ政権による対日貿易攻勢、古くは1960年代から積み重なって来た米国による対日通商圧力など、経済利益に関してはその都度変化する米国の態度を、身を持って学んで来たからだとの分析だ。昨年から始まった安倍総理の実利主義的な強い「ラブコール」に対し、中国政府が内心、少なからず当惑していたとの裏話もある。安倍総理は、来月G20が開かれる大阪で習近平主席と首脳会談を行い、正式に習主席の国賓訪問を要請するとみられる。
■安倍総理、米とイランの仲裁も
大阪G20首脳会談を前にした6月12〜14日に、安倍総理のイラン訪問が予定されている。一触即発の状態にまで高まっている米とイランの関係を、日本が仲裁するためだとみられる。
安倍総理のイラン訪問は、実際には今月中旬から話に上がり始めた。イランの外務大臣が日本を訪問するなど、イラン側に対する事前の調整作業は済ませた状態だっただけに、トランプ大統領の反応がカギとなっていた。
トランプ大統領の反応に確信が持てなかった日本政府は、トランプ大統領との首脳会談前までイラン仲裁に関して「箝口令」を敷いていた。トランプ大統領は、今月27日の日米首脳会談後に開かれた共同記者会見で、「安倍総理がイランととても良い関係を構築している事は知っている」と、日本の役割に期待している事を言葉にし、事実上、日本の「仲裁役」を承諾した。
また、トランプ大統領は日朝首脳会談を「全面支持する」事を明らかにし、日朝対話を通じて米朝を繋ぐという、朝鮮半島問題の仲裁者の役割を模索していた安倍総理に、全幅の信頼を寄せた。
安倍総理の外交範囲が、朝鮮半島と中国、中東に至るまで、これまでに無く広がっているというのが、日本の外交筋の雰囲気だ。この様な流れであれば、7月の参議院選挙前に外交分野で点を稼ぐのは言うまでもなく、朝鮮半島と東北アジア外交での存在感も強まるとみられる。
日本の外交が勢いを見せ始めたのは、安倍・トランプ両首脳の蜜月関係に起因する。この様な関係の形成には、安倍総理の、いわゆる日本式の手厚い接待を意味する「おもてなし外交」と、トランプ大統領の「取引外交」が一致したからだとの見方が大勢を占めている。
また7月の選挙を前にした安倍総理と、来年に次期大統領選挙を前にしたトランプ大統領が、順番にお互いを助けるウィン・ウィン外交が元となった事で、実現可能になったとの分析もみられる。
翻訳︰水野卓