原油市場 弱気相場突入…景気鈍化憂慮が原油価格引き下げる

原油市場 弱気相場突入…景気鈍化憂慮が原油価格引き下げる
原油市場がイラン産原油の禁輸措置などにも関わらず、弱気相場に突入した。世界経済鈍化への憂慮が供給鈍化の展望を圧倒し、原油価格は最高値から20%以上下げている。専門家らが原油需要の予測すら出来ないとみている一方、これにより当分の間は原油価格が反転上昇するのは難しいとの見通しだ。
市場は5月初旬の米中貿易交渉妥結への期待感に湧き、経済の回復と、これによる原油需要増加に焦点を合わせていた。この頃までは、イラン産原油の禁輸措置、リビアの内戦、ベネズエラの原油生産萎縮など、供給減少要因が市場を左右していた。
しかし先月、トランプ大統領が中国製品2500億ドル相当に対する関税率を10%から25%に引き上げ、残りの製品についても25%の関税を賦課すると迫って以降、米中貿易交渉が決裂した事で市場の雰囲気は一変した。
現在、IMFをはじめとする専門家らは、貿易戦争の高まりや保護主義強化により、世界経済に長期的な衝撃が避けられなくなったと結論付けている。
更に相当数のアナリストが、この様な流れが自家増殖して行く事を憂慮している。最近の金融市場の混乱が、企業と消費者を更に萎縮させ、投資や消費減退を呼び起こす可能性もあるとみられる。
マクロ・リスク・アドバイザーズのチーフ・テクニカル・ストラテジストのジョン・コロボス氏は、「最も大きな危険要因は、ネガティブ・フィードバック」だと、「リスク資産の動きが、消費者や企業の心理を萎縮させる可能性がある」と話した。
米国経済も弱まりつつあり、世界経済は更に鈍化するとの憂慮の声も、徐々に説得力を増している。先月の米国非農業民間部門の雇用増加規模は2万7000人で、予想値17万3000人を大きく下回った。
米国の消費支出も鈍化するとの憂慮の声が高まる中、米国製造業指数は約10年振りに最低値を記録した。IHSマーケットが集計するPMI(米国製造業購買担当者指数)のみならず、全世界のPMIも同様に低下している。米国と中国の製造業指数が、依然として活動拡大を表す基準線の50を上回っている点はポジティブな要素ではあるものの、減退傾向が明らかであるという点と、マクロ展望の改善を期待出来ないという点は、悲観的な展望の裏付けになっている。
特に米中を除いた、ドイツや日本など各国の製造業指数が、先月50以下に低下した事で、成長鈍化への憂慮が高まっている。コンフルエンス・インベストメント・マネジメントのチーフ・マーケット・ストラテジストのビル・オグレディ氏は、「突然、世界の全ての国の製造業指数が萎縮領域(50未満)に落ちた」と、「これは(原油)需要に良くない影響を与えるもの」と話した。また、「米国経済はそこまで悪くはないが、世界経済は完全に別の動きを見せている。特にヨーロッパの鈍化が激しい」とも指摘した。
この様な中、ヘッジファンドの動きも下げ相場予想に傾いている。CFTC(米商品先物取引委員会)によると、4月末までは14︰1で下げ相場予想を圧倒していた上げ相場予想は、現在5︰1の水準まで大きく萎縮している。ただし、今月25日のOPEC(石油輸出国機構)閣僚会議で追加減産が決定すれば、市場の流れが一時的に変わる可能性もあるとみられる。
翻訳︰水野卓