香港が米中摩擦の新たな火種になるか?
香港が米中摩擦の新たな火種になるか?
香港が「犯罪人引き渡し法案」問題で大きく揺れ動いている。法案に反対する香港市民らが大規模デモを行い中国政府と対立した事で、内部分裂が激しくなっている。更に米国が法案に反対する香港市民らへの支持を表明した事で、米中貿易戦争の戦線が台湾に続き香港にも拡がっている様子だ。
香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストは、香港議会に該当する立法会が12日午前11時に始める予定だった「犯罪人引き渡し法案」の2次審議を具体的な日程の発表無しで延期したと報じた。しかし親中派が掌握している香港立法会の評決意思は固く、20日までの審議を経て評決を強行するとみられている。この日の午前に予定されていた審議が一時延期された事は、香港内の反中感情がかなり高まっている事を反映している。
この日、香港市民らは朝から政府庁舎前に押し寄せて「犯罪人引き渡し法案」反対デモを行い警察隊と衝突した。香港市民らが中心となったデモ隊は工事現場などで使われるカラーコーンを警察隊に向かって投げつけ、警察は高圧放水や催涙スプレー、催涙ガスなどを使用して対処した。
同紙によると、この日の午後4時頃に香港警察局長は、今回の衝突を暴動だと断定し強制解散に踏み切った。
香港政府は、犯罪人引き渡し条約を締結していない中国などの国家や地域にも事案別に犯罪人の引き渡しが可能となる法案を推進している。香港の野党と市民団体は、中国政府が反体制側の人物や人権運動家を中国本土に送還するためにこの法案を悪用する可能性があると憂慮している。
中国本土では起こり得ない市民らの激しいデモ行為に、中国政府も状況を鋭意注視している。2014年に香港行政長官の完全直選制などを要求して79日間、香港中心部を占拠した大規模デモ「雨傘革命」以後、デモ隊が香港中心部の道路を占拠した事はほぼ無かった。香港では今月9日にも100万人を超す市民らがデモに参加している。
香港の問題は米中貿易戦争の新たな火種になる様相を見せている。貿易戦争が起きている最中に米国が台湾を国家として分類した事は、中国の触れてはいけない部分に触れた事になる。また米国が香港のデモ隊を支持するとの立場を公にした事で、米中間の摩擦がより激しくなっている状況だ。
米国国務省は香港デモ後のブリーフィングで「香港政府の法案に対し深刻に憂慮している」と、「一国二制度が引き続き侵害されており、これは香港が長い間確立して来た特殊な地位を危うくしている」と話した。一国二制度はひとつの国家ではあるものの、ふたつの異なる体制で運営される事で、1997年の香港返還から50年間は中国が香港に対し高度の自治権を与える事をいう。
これに対し中国官営メディアのグローバル・タイムズは香港の大規模デモについて「外国勢力、特に米国の介入が無ければ、香港の極端な分離主義者らがこの様に深刻な攻撃を敢行出来なかった」と米国を非難している。中国外交部は前日のブリーフィングで「米国は中国の内政に干渉する事を中止せよ」と要求した。
米国は一国二制度の元で香港を中国とは別個の国家として分類し、関税賦課や制裁面で香港に対して弾力的に対応して来た。しかし今回の法案が通過した場合は、米国の香港への待遇も次第に強化され、香港経済の活力が削がれる可能性もある。
翻訳︰水野卓
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