揺れ動く香港…アジア金融ハブの地位失うか

揺れ動く香港…アジア金融ハブの地位失うか
‐香港政府、「逃亡犯条例」無期限延期
‐改正案の完全撤回せず保留…問題はいつまた表面化するか分からず
1週間の間、香港を混沌の坩堝に陥れた「逃亡犯条例」の改正案が無期限延期となった。事実上、香港デモ隊の勝利だが、中国政府と香港の未来はより大きな課題に直面する事となった。中国政府と官営メディアが100万人に達した香港市民のデモ行進を「暴力を用いた暴徒」だと非難した事で、中国政府と香港市民の間で制度に対する見解の違いが更に大きくなっている。また民主的法律の枠組内で金融ハブの地位を享受していた香港は、今回の問題を契機に地理的利点を失う事になると憂慮する声もみられる。
■市民の勝利と中国政府の危機感
香港の親中派行政トップの林鄭月娥(リンテイ・ゲツガ)行政長官は15日午後3時に緊急記者会見を開き、「ここ2日間の内部での検討の結果、改正案推進を暫定的に中断する事を決定した」と、「期限を定めず、社会の各分野との疎通を再開し、多様な見解に耳を傾ける」と述べた。これは改正案推進を事実上無期限中断した事になる。また「経験に照らしてみると、今年中に改正案推進を再度行う可能性は無い」と付け加えた。
無期限延期により、表向きには今回の問題が一段落した様にも見えるが、中国が抱える事になった負担は相当に大きい。まず中国本土で監視や統制、物理的手段を用いてデモを制圧するやり方が香港で失敗に終わったという点。香港市民の勝利と捉えられる今回の問題が、今後中国共産党中心の制度安定に大きな負担として働く可能性がある。
かつて2003年に国家保安法推進が50万人のデモにより霧散し、2012年には道徳・国民教育強が12万人のデモにより失敗に終わった前例がある。習近平体制以降は世論統制が厳しくなっているものの、今回の逃亡犯条例も同様に香港市民の意思に政府が白旗を掲げた格好となった。
デモの過程で浮き彫りとなった市民感情の高まりも収拾プロセスに大きな負担になるとみられる。デモに参加した香港の一般市民を暴力を用いる暴徒に仕立てあげた上、警察隊が催涙弾やゴム弾、高圧放水などを用いた強硬な鎮圧を押し通したため、香港市民は憤りを隠せないでいる。無期限延期の決定により事実上市民らの思いは通じたものの、鎮圧行為を正当化する政府の立場と香港市民の認識の差が拡がっている。
■経済ハブの地位「危機」憂慮
香港の問題は今後も社会不安の火種として残るとみられる。林鄭月娥行政長官が「改正案を完全に撤回する事は無いとの点をはっきりさせる」と話した事も、香港問題の火種が依然として残っている事を物語っている。
これは一国二制度の原則が今後も引き続き論争の中心になる事を意味している。香港は1997年に中国に返還されたものの、中国と英国の合意により2047年まで「一国二制度」の原則の元で政治、立法、司法体制の独立性を保障されている。しかし最近になり香港市民らの間でこの原則が崩れているとの危機感が高まっており、逃亡犯条例反対デモで表出したのだとの分析もみられる。
また香港政府が推進中の逃亡犯条例が制定されれば、香港がアジア金融ハブの地位を失う事になると、米ウォール・ストリート・ジャーナルが14日に報じている。
主な多国籍企業は中国事業を行いながらも香港にアジア地域の本部を置いている。これは香港が「法の支配」を受けているからだ。しかし逃亡犯条例が制定されれば、犯人が中国に引き渡され、中国の法律によって裁判を受ける事になる。西欧式の法律システムが働いている香港ではなく、人治が行われている中国本土のやり方に経営活動環境が変わる可能性がある事に対する憂慮がみられる。
同紙は、「一国二制度に生じた亀裂が大きくなればなるほど、多国籍企業の脱香港の動きが強まり、アジア金融の中心地である香港の地位も危なくなる」と分析している。
既に今回の逃亡犯条例問題の中、香港に本拠を置く財閥の一部が資金をシンガポールに移しているとの報道も出ている。今後香港の地位が危うくなった場合、シンガポールがその恩恵を受けるだろうとの話もある。
香港の個人投資家であり企業支配構造専門家のデイビッド・ウェブ氏は「中国と香港の間の合法的な防火壁が破壊されれば、2度と戻る事は出来なくなる」と、「逃亡犯条例は、才能ある専門家らが自身のキャリアを構築するために香港に移住する事を妨げるだろう」と話している。
翻訳︰水野卓
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