
米韓朝の“DMZドラマ”…その後は?
まるでドラマの様だった6.30米韓朝首脳の板門店会合から1ヶ月が過ぎた。板門店会合をドラマと表現した理由は、3人の首脳が板門店で面会するという状況を誰も予想出来なかったからだ。
状況はこうだった。米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長は6月になって親書を交わし、ハノイでの首脳会談「ノーディール」により冷え切ってしまった米朝関係の突破口を切り開こうとしていた。
これにより、G20(主要20ヶ国)首脳会議を終えて訪韓するトランプ大統領が金正恩委員長と会う可能性があるという見方も徐々に浮上し始めた。しかしトランプ大統領はホワイトハウス出発前に「今回は金正恩委員長には会わないだろう」と周囲の期待を一蹴していた。
北朝鮮もまた同様だった。北朝鮮外務省は前月末、「交渉姿勢がきちんとしていなければならず、話の通じる人物がしっかりとした案を持って来て初めて交渉を開く事が出来る」と攻勢を強めていた。韓国に対してはむしろ交渉から外れる事を求めるメッセージを送った。外務省米国担当局長の談話を通じ「米朝対話をするとしても韓国を介してする事は絶対に無い」と釘を差していた。
状況が一変したのはトランプ大統領のツイッターだった。訪韓当日の29日午前、「金委員長がこの文章を見ているなら、私は南北の国境地帯であるDMZで彼と会って握手をし、挨拶を交わせたらと思う」という文章をツイッターに上げたのだ。トランプ大統領自らも「朝に考えが浮かび提案した」というこのツイートに北朝鮮外務省の崔善煕(チェ・ソンヒ)第1外務次官が「非常に興味深い提案」だと答えた事で、状況が急激に動き始めた。
トランプ大統領に随行していたスティーブン・ビーガン米国務省対北特別代表は韓国大統領府での晩餐会を取り止めて板門店に駆け付けた。結果、翌30日に米韓首脳が板門店を訪れた際、金正恩委員長が現れてDMZドラマが完成した。
この様にDMZドラマが成功したのは、終始一貫して米韓朝の首脳が主人公だったからだ。トランプ大統領が提案し、金正恩委員長がこれを受け入れ、文在寅大統領が舞台を整えた。米韓朝首脳のトップダウン政治が作り上げた作品だ。
問題はその後だ。主人公らが後ろに退いた今、状況は180度変わってしまった。米朝間の実務交渉は予定されていた約束が守られず、北朝鮮は米韓合同軍事訓練「同盟19−2」を取り上げて激しい批判を浴びせている。大半の専門家らは実務交渉を前にした北朝鮮の言い訳でしかないとの見方だが、短距離弾道ミサイルまで発射された状況では韓国国民は不安を感じるばかりだ。
更に大きな問題は、水面下での交渉が進められているという米朝関係とは違い、南北関係は停止した状態にあるという点だ。北朝鮮はミサイル発射が、表向きは「平和の握手」を演出し、裏では同盟19−2や戦略兵器導入の様な韓国の矛盾した態度のせいだと非難した。更に最悪の食糧難に陥っている状況でも韓国産の米5万トンの支援は受けないと頑なな姿勢を維持している。
南北関係に進展が無い理由についてある専門家は、米国と北朝鮮と同様に、韓国政府もまた大統領の顔色ばかり伺っているためだと皮肉った。対北政策が文在寅大統領の決定のみを待つトップダウン手法で進められているという話だ。
このため韓国政府は米朝対話と南北関係の好循環に向け努力するという話ばかり繰り返し、韓国国民らに対し喜びも感動も与えられないでいる。主人公らが一歩退いた状況であるなら、脇役が出し惜しんでいた能力を発揮しなければならない。主人公3人だけではドラマは作れない。
翻訳:水野卓
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