米国−イランに高まる緊張、原油・金価格高騰…世界経済に悪影響

-市中資金は安全資産に移動
-北海ブレント油、70ドル突破の可能性
-史上最高値のNY株式市場も下落
-イラン報復の形態と強度がカギ

米国とイランの緊張が高まり、世界経済に新たな悪材料となる可能性が高まっている。米国のドローン攻撃によるイラン司令官殺害事件後にイランが報復を示唆した事で、国際原油価格が高騰し、株価は下落した。また金などの安全資産の価格も高騰している。

米中間の「第一段階の貿易交渉」合意が世界経済回復へのきっかけとなり、この事が原油需要の増加をもたらすとの点からも、米国とイランの間の緊張の高まりによる原油供給への不安が原油価格を引き上げるとみられる。また原油供給への不安と原油供給の上昇が、世界経済回復への妨げになるとの憂慮の声もみられる。

英紙フィナンシャル・タイムズやAP通信などの海外メディアによると現地時間4日、前日の国際原油価格は急騰し、株価は下落した。また市中の資金は安全資産に集まった。国際原油価格の基準となる北海ブレント油と米国産原油価格の基準となるWTIは、1バレルあたりで4%近く暴騰した。北海ブレント油は昨年9月16日のサウジアラビア石油施設攻撃以降で最も大幅な上昇となり、WTIは昨年4月の本格的なドライブシーズンを前にした原油価格上昇以降で最大となる上げ幅を記録した。後場になり上昇幅は多少落ち着いたものの3.5%の上昇で取引を終え、北海ブレント油は1バレル68.60ドル、WTIは63.04ドルまで上昇した。

■原油価格、70ドル突破の可能性も

シティ・グループのアナリスト、エドワード・モス氏は「イラン当局が、またはイラン革命守備隊が単独で報復に出て、この事が中東地域の原油供給に支障をきたすとの見方が原油価格を引き上げた」と話した。また「イランの報復攻撃が、米国とヨーロッパの石油メジャーが新たに投資した生産施設が建ち並ぶイラクになるのか、別の場所になるのかは分からないが、湾岸地域の石油施設を狙った攻撃になる可能性があり、パイプラインまたはホルムズ海峡や紅海の海上原油輸送を妨害する攻撃になる可能性もある」と話している。それ以外にも「レバノンの支援勢力を通じたイスラエルに対する攻撃や、イエメンの反乱軍を通じた湾岸地域の国家に対する攻撃も報復の方法として考えられる」と分析した。

モス氏は「イランの報復が現実のものになるとの憂慮が市場を圧迫し、昨年夏に60ドル水準にあった北海ブレント油の価格は直ぐに70ドルを突破する」とみている。ホルムズ海峡は幅3kmに過ぎない狭い海域だが、湾岸地域全体の原油輸送の50%を担う中心的な航路。この海域を通過する原油の約80%が日本をはじめ、韓国、中国、インドなどのアジア諸国に供給されている。

金融市場も動揺している。2日に史上最高値で今年の初取引を始めたNY株式市場は、午後になり下げ幅は落ち着いたものの1%前後の下落となった。S&P500指数は一時1.1%近く下落して0.7%の下落で取り引きを終えた。ダウ指数やナスダック指数も0.8%の下落となった。アジアやヨーロッパの株式市場も同様に下落し、特に製造業の比重が高いドイツ株式市場のダックス指数は1.3%の下落となった。

一方で安全資産は高騰した。金は1.3%上昇した1オンス1549ドルと約4ヶ月ぶりの高値となった。米国債10年物の価格も高騰し、価格と反対に動く収益率は0.092%ポイント下落した1.7898%となった。英国やドイツなどヨーロッパ主要国家の国債収益率も同様に下落した。

■地政学的リスクプレミアム

ラボバンクのマクロ戦略責任者、エルウィン・デ・グルート氏は「依然として地政学的リスクは残っていたものの、これが再び影響し始めている」と、「地政学的要因は依然として重要だ」と話した。また「地政学的変数が持続的な衝撃を与えることはない」としながらも、「しかし過去数年間、この様なリスクは市場に間違いなく衝撃を与えて来た」とも話している。

イランの報復がどの様な形になるのかがカギになるとみられる。

パンテオン・マクロエコノミクスのチーフエコノミスト、イアン・シェファーゾン氏は「中東の地域不安が株式市場に継続的な売り圧力となり、企業と消費者の心理を労働市場とインフレ(下降という)2次的な衝撃を憂慮するほどに押し下げれば、衝撃が長期化する可能性もある」とみている。また「イランが予想以上に厳しい措置を選択すれば、これが実質的なリスクになる」と話している。

翻訳:水野卓
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