ベネズエラの緊急対策に混乱加重…専門家らインフレ悪化を警告

ベネズエラの緊急対策に混乱加重…専門家らインフレ悪化を警告
ハイパーインフレに苦しんでいるベネズエラが自国通貨ボリバルの96%切り下げや最低賃金の60倍引き上げなどを柱にする緊急経済対策を発表したが、混乱はなかなか収まらないようだ。市場と専門家らは「今回の措置が経済安定化に何の助けにもならない」「物価上昇を煽るだけだ」と懐疑的な反応を見せている。
■史上最大幅の切り下げと最低賃金60倍引き上げ
18日、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)とブルームバーグ通信など海外マスコミによると、ベネズエラのマドゥロ大統領は前日の夜、国営TVで中継された対国民演説で「90日 経済回復計画」を発表した。
これによると、20日から新しい通貨である「ボリバル・ソベラノ」(最高ボリバル)が導入される。ボリバル・ソベラノは既存のボリバルを10万対1に切り下げた通貨で、10万ボリバルが1ボリバル・ソベラノとなる。ベネズエラ史上最大幅の通貨切り下げだ。
新通貨は、ベネズエラが自国産石油に基盤を置いて作ったデジタル仮想通貨「ペトロ(Petro)」と連動される。1ペトロ(約60ドル)は、3600ボリバル・ソベラノと策定された。
最低賃金は月300万ボリバルから1800ボリバル・ソベラノ(0.5ペトロ)に電撃引き上げられた。今年に入って5回目の賃上げ。額面上では60倍、闇市場のドルの為替レートを適用した場合は約34倍の引き上げとなる。
マドゥロ大統領はまた、ガソリン補助金を削減するという計画も改めて明らかにした。政府の補助金を受けて安価に提供されているベネズエラの燃料がコロンビアなどの近隣国に密輸されている慣行を根絶し、これによるコスト100億ドルを削減するということがマドゥロ大統領の狙いだ。
マドゥロ大統領は登録された公共交通機関の運営者と個人車の所有者に直接補助金を与える案を推進しようとする。これにより、登録されていない車の所有者は補助金支給対象から除外され、国際原油価格でガソリンを買うことになる予定だ。
■専門家ら「混沌極まる…インフレ悪化予想」
この日の発表は、ベネズエラの深刻な経済難とハイパーインフレが続く中で出た。ベネズエラの経済規模は過去2013年マドゥロ大統領就任後、半分以上に減少しており、インフレ率は今年100万%まで急騰すると予想される。通貨が紙切れになってしまい、食料や飲料水、医薬品などを手に入れることが難しくなった国民は隣国のコロンビア、エクアドル、ペルー、ブラジルなどへ去っている。国連によると、2014年以来、経済危機で国外逃避中のベネズエラの国民は230万人に達している。
マドゥロ大統領は同日の演説で、「私は国が回復することを望み、方法も持っている」と、今回の措置を自身が作ったと説明。また「国民の苦しさを知らない専門家らは、誰も関与していなかった」と強調した。
しかし、専門家は、「このような措置がむしろインフレをより引き上げて混乱だけを招くだろう」と批判した。コンサルティング社ODHのエコノミストであるアナベルラ・アバディー氏は、「同措置によって、今年のベネズエラのインフレ率は、国際通貨基金(IMF)が予想した100万%より上昇するだろう」と予想した。
エコノミストのタマラ・ヘレーラも、「安定化段階や投資誘引につながるようなものは全くない」とし「非常に強いインフレの影響があると予想される。残っている生産的なシステムの最後のものまで奪われる可能性もある」と懸念を示した。
コンサルティング会社エコノメトリカのエンケル・ガルシア理事は、「今回の措置は、一貫性のない矛盾した構想」とし「どのように執行されるかをめぐり不確実性が増幅されるだろう」と予想した。
Copyright © The financial news japan. All rights reserved.
ファイナンシャルニュースジャパン