長崎県対馬市の観音寺から2012年に盗難された県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」が、5月10日、韓国忠清南道瑞山市の浮石寺にて日本側に正式に引き渡された。仏像は12日に対馬へ戻され、観音寺に再安置される予定。盗難から12年半を経て、日韓間の文化財返還を巡る長年の懸案が一応の決着を見た。
浮石寺では同日、返還に先立ち仏像の最後の法要が営まれた。法要には観音寺の田中節孝前住職をはじめとする日本側関係者も参列し、静かな祈りの場が設けられた。仏像は仁川国際空港から空路で福岡に到着後、船で対馬へ輸送される。観音寺でも帰還を祝う法要が行われる。
この仏像をめぐっては、浮石寺が「元来は14世紀に倭寇によって略奪された」として所有権を主張し、2016年に仏像の返還差し止めを求める訴訟を起こしていた。韓国大田高裁は2023年2月、観音寺の所有権を認定し、同年末に最高裁でも確定した。
浮石寺は「仏像の出処地」として約100日間にわたり一般公開と法要を実施してきた。円牛住職は「今後も対馬と円満な交流を続け、文化財の価値を生かすために展示会などを共に企画したい」と述べ、文化協力の継続を表明した。
本件は日韓間の文化財返還問題の象徴的事例として注目されており、今後の類似事案への影響も注視される。













Leave a Reply