金利パニックに米株暴落…高まる不安心理

金利パニックに米株暴落…高まる不安心理
米国株式市場が10日、大型ハイテク銘柄を中心に大幅下落した。先週、米国債の収益率急騰に触発されて株式市場の下落基調が続き、市場の不確実性と投資家らの懸念も高まっている。
一部のアナリストは、この数年間の株価上昇を主導して来たハイテク業種などの成長銘柄から、医療サービスなどの価値及びディフェンシブ銘柄に乗り換える事を考慮する転換点になったと指摘している。
ダウ平均株価はこの日、831.83ドル(3.15%)下落した25598.74ドルで引けた。S&P500指数は94.66ポイント(3.29%)下げた2785.68、ナスダック指数は315.97ポイント(4.08%)下がった7422.05で取引を終えた。この日のダウ平均株価とS&P500指数は、2月以降で最も大きな1日の下落幅を記録した。ナスダックの下げ幅は2016年6月24日以降で最大となった。
S&P500指数は5取引日連続の下落で、2016年末以降で最長の下落を続けており、テクニカル的に重要な50日と100日の移動平均線を下回っている。またダウ平均株価は5取引日中、4日下落している。
銘柄別では、アマゾンが6.15%の下げ、ネットフリックスは8.4%の急落。フェイスブックとアップルはそれぞれ4%以上の下げ。アルファベット(グーグル)は4.6%、マイクロソフトは5.4%下げた。S&P500テクノロジー業種は全体で4.8%の下落と、ここ7年で最悪の下落幅となった。
オポーチュニスティック・トレーダーの最高経営者ラリー・ベネディクト氏は、米経済チャンネルCNBCの番組で「人々は高く跳び上がったハイテク銘柄から、今逃げ出して来ている」と、「人々はヘッジをしっかり出来ていなかったと考えられる。今後より多くの苦痛を経験する可能性もある」と話した。
株式投資家の不安心理を反映する「Cboe変動性指数」は40%相当跳ね上がり、投資家が株式市場の更なる変動に備えている事を現している。
CNBCはこの日の午後、現在のS&P500採用銘柄の58%となる295銘柄が、52週の高値から10%以上下落し、調整ないし弱気相場の領域に入ったと報じた。この中で、ティファニー、マイケル・コース、ウェルズ・ファーゴ、シティ、アマゾン、アルファベットなど、172の銘柄は高値から10〜20%下げ、調整領域に入った。また直近の高値から20%下落したインテル、フェイスブック、ツイッター、フォード、GM、GE、アメリカン航空など123の銘柄は弱気相場に入ったとされる。
ウォール・ストリート・ジャーナルは国債収益率の急上昇とインフレのシグナルが、企業の利益幅縮小の憂慮を呼び起こし、この10年間の超低金利時代の恩恵を受けて来た企業株価を大きく落としたと分析している。
10年満期国債の収益率は前日の3.208%から、3.231%に上昇している。しかし取引の後半で株価の下げ幅が大きくなると、収益率も上げ幅を打ち消して小幅の下落となった。多数のファンドマネージャーとアナリストは、国債収益率が更に急上昇すると、企業が第3四半期決算発表で2桁の収益増加を発表したとしても、株式市場は引き続き苦痛を経験するとみている。
1280億ドルの資産を運用するQMAの専任ポートフォリオ・マネージャーであるエド・キャンベル氏は、ウォール・ストリート・ジャーナルに「国債収益率の動きの速さが株式市場を不安にさせている。そして現金と債権の金利上昇が株式により大きな競争になっている」と語った。
米投資銀行ゴールドマン・サックスによると、多数のミューチュアルファンドとヘッジファンドは既にハイテク銘柄のポートフォリオを減らし、医療サービスや経済環境の変動に対処出来ると思われる銘柄への投資を増やし始めている。しかし大型の資産運用会社と零細個人投資家にとってハイテク銘柄は、未だに最も人気のある銘柄のひとつとされている。
翻訳:水野卓