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ドローン脅威に揺れる原発 対策不十分で「想定外」の限界露呈

佐賀県の玄海原子力発電所にドローンとみられる光が侵入したとされる一件が、安全対策の根幹を揺るがせている。原子力規制委員会は27日、「ドローンと思われる光」と訂正したが、原発敷地内に攻撃可能な無人機が接近できる事実自体が、現行の警備体制の脆弱さを浮き彫りにした。

玄海原発から佐賀県への通報は26日午後10時20分。原子力安全対策課の職員らは夜間に緊急対応を迫られ、「県民が安心できるよう訴え続けるしかない」との声が漏れた。玄海原発には九州電力の1号機から4号機までが並ぶ。

原発の警備は航空機によるテロを念頭に2013年以降強化されてきたが、近年のドローン進化には対応が追いついていない。特定重大事故等対処施設の整備は義務化されているものの、ドローンのような小型かつ低空飛行の脅威は、規制基準の想定外だ。

テロ対策の専門家である公共政策調査会の板橋功センター長は、国際原子力機関(IAEA)の勧告でもドローン問題は網羅されておらず、各国ごとの対応に任されている現状を説明した。

東京科学大学の奈良林直特定教授は、小型ドローンが既存の監視カメラやセンサーでは捉えきれない可能性があると指摘。今回もカメラには映像は残されていなかった。

ただし、日本の原発警備が国際的に見て遅れているわけではないとの見方もある。警察部隊が敷地内に常駐し、海側からは海上保安庁が監視を行い、ドローン対策についても指導を実施している。

ドローンの侵入時、自衛隊は妨害電波による対応が可能だが、原発は敷地が広く、全域をカバーするには多大なコストがかかるとされる。板橋氏は「関係機関の連携強化と訓練継続が最善の現実策」としている。

一方、奈良林教授は、原発の重要施設を網状のフェンスで物理的に覆う手法を提案。「ドローンは軽量で、簡易なフェンスでも飛行を阻害できる」とし、コスト面と即効性を両立する対策として注目される。

ドローンの進化は利便性と共に新たなリスクをもたらしており、原子力施設の安全保障においても「想定外」が通用しない段階に突入した。

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