アップル、新デジタル事業を発表…ネットフリックスに宣戦布告

アップル、新デジタル事業を発表…ネットフリックスに宣戦布告
-Apple TV+でネットフリックスなど既存の企業に挑戦
-クレジットカード・サービスの計画も
アップルが25日、アイフォン販売に対する依存度を下げ、新たな収益創出に向けたデジタルサービスを発表した。
英紙フィナンシャル・タイムズと米経済チャンネルCNBCをはじめとする海外メディアは、アップルがハリウッドやウォール街と手を握り、有料サービス事業を強化する事で、今後の予測が不可能になっているアイフォンの販売減少分を埋める、新たな成長戦略を打ち出したと報じた。
この日、米国カリフォルニア州クパチーノにあるアップル本社内のスティーブ・ジョブズ・シアターで行われたイベントで、アップルが公開した新サービスは、外部制作と自社制作の動画コンテンツをストリーミング配信する「Apple TV+」、インターネット新聞と数百の雑誌を提供するアプリ「Apple News+」、ゲームサービス「Apple Arcade」、クレジットカード「Apple Card」などが中心となる。
アップルがApple TV+を通じ、今後ネットフリックスやアマゾンプライム、フールーなどと一戦交える覚悟だ。ティム・クックCEOも、「私達はTVを愛している」と期待感を表した。
セットトップボックスを用いて利用されて来たこれまでのApple TVは、米国コネクトテレビの市場占有率が13.2%と、ロクやアマゾン、グーグルに比べ遅れを取っていた。
アップルは有料視聴者を確保するため、サムスンやLG、ソニー、ビジオのスマートTV、ロクやアマゾンファイアTVの様なライバル企業の機器でもApple TV+の視聴を可能とする大きな決断を下した。しかし、今秋に100以上の国でサービスを開始すると発表したのみで、価格についての言及は無かった。
Apple News+は月額10ドルで、ウォール・ストリート・ジャーナルやロサンゼルス・タイムズ、コンデナストから発行される雑誌をはじめ、300以上のメディアから提供を受けられる様になっている。同サービスは米国とカナダからスタートし、今年下半期には英国とオーストラリアにサービスが拡大される予定だ。
セガやコナミ、レゴ、ディズニーなどの企業が制作した100を超す既存及び新規のゲームを、無制限に楽しむ事が出来る「Apple Arcade」は、今年下半期中には利用可能になると見られる。アップルはApple Arcadeを通じ、これまで注目されなかったゲーム開発企業にもより多くの機会を与えると伝えた。
今回のイベントでアップルが唯一の製品として打ち出したのは、マスターカードや投資銀行ゴールドマン・サックスと手を握りスタートさせる「Apple Card」だった。これまでのApple Payサービスと統合され、今夏の米国を皮切りに、マスターカードから発行される。
クックCEOは、「Apple Cardは、この50年で最も大きなクレジットカードの革新になるだろう」と話した。アップルは、ゴールドマン・サックスがカード顧客の個人情報を、広告やマーケティング目的に第三者に提供する事は無い事を強調している。
この日のイベントには、映画監督スティーブン・スピルバーグや俳優ジェニファー・アニストン、司会者オプラ・ウィンフリーなどの著名人も多数舞台に登場した。
イベントのフィナーレを飾ったオプラ・ウィンフリーは、自身がアップルと手を握ったのは、「既に使用されているアップル製品が14億台あるから」とし、「コミュニケーションの方法を変えた企業だ」と褒め称えた。
eマーケターのアナリスト、クリス・ベンソン氏はUSAトゥデイとのインタビューで、「アップルの強みは米国を含む全世界で既に普及しているアイフォンを、有効に活用出来る事だ」と話した。
またPPフォーサイトのアナリスト、パオロ・ペスカトリ氏は、「アップルが音楽とニュース、雑誌、動画、ゲームなど全てのサービスの、新たなネットフリックスになろうとしている様だ」と評している。
しかし今回のアップルの発表にも関わらず、この日のアップルの場中株価は下がり、前取引日比1.21%の下落で取引を終えた。
CNBCの司会者ジム・クレイマー氏は、今回のアップルの発表について「アナリストらが期待していたブロックバスター級には及ばなかった」と語った。株価が下がった理由については「(発表された新事業の内容が)歩行者用ナビのようなありきたりな物なので、そうなったのだろう」と批判した。
翻訳︰水野卓
【アップルの進撃】