北朝鮮の金正恩氏、連日の“経済行脚”…国内外に向け狙いあり


北朝鮮の金正恩氏、連日の“経済行脚”…国内外に向け狙いあり
北朝鮮の金正恩国務委員長が、連日経済行脚を進める姿が外部に相次いで公開されている。国際社会の経済制裁があっても、これまで主張して来た「自力更生」が成されている事を誇示するのと同時に、核交渉にばかりとらわれてはいないとのメッセージが込められていると考えられる。
9日、北朝鮮メディアによると、金正恩委員長は今月4日、北朝鮮の両江道三池淵郡の建設現場を訪問し、今年初の経済視察を行った。金委員長のこの日の三池淵郡への訪問は昨年10月以降、6ヶ月振りとなる。
また6日には、江原道の元山葛馬海岸観光地区と平安南道の陽徳温泉観光地区を訪問した。これらの地を訪問したのは5ヶ月振りの事。更に8日には、開業を前にした平壌にある大成百貨店を訪れた。
報道によると金委員長は、「百貨店が見事に整備された結果、首都の市民らに質の良い、各種食料品や衣類、靴、家庭用品、日用雑貨、学用品、文化用品などをより多く提供出来る様になった」と話したという。
金委員長が連日経済行脚を続けているのは、今月11日に最高人民会議と米韓首脳会談が開かれる事と、無関係ではないと見られる。
この日、北朝鮮では第14期代議員が選出された後、最初の最高人民会議が開かれる。日本の国会に該当する最高人民会議は、朝鮮労働党の決定を追認する程度の役割しか果たしていない。なお、昨年開かれた第13期6次会議に、金正恩委員長は参席していない。
今年は14期の最初の会議となるため、金委員長が参席し、核交渉関連のメッセージを出すのではと関心を集めている。昨年4月に開かれた13期最高人民会議の6次会議で北朝鮮は、経済発展総力路線を採択している。これ以降、1年が経過した時点で、経済発展がしっかりと進められているという事を、国内向けに見せる動きだと見られる。
また11日、米国ワシントンで開かれる米韓首脳会談では、米韓首脳が北朝鮮の非核化戦略を共有すると見られている。以後、米国の要求にどの様な変化が現れるかに関心が集まっている。開城工業団地や金剛山観光など、北朝鮮が求める南北経済協力再開の可否も、北朝鮮の主な関心事項のひとつだ。
米国のドナルド・トランプ大統領は2月28日、ベトナムのハノイで開かれた2回目の米朝首脳会談で、北朝鮮の金正恩国務委員長に、北朝鮮が保有する核兵器と核物質の全てを米国に引き渡すとの要求を含んだ、いわゆる「ビッグディール」文書を渡した事が分かっている。
当時、米国による予想外の要求に北朝鮮側は戸惑い、結果、制裁緩和を得られないまま、会談は決裂した。米国の立場は、現在まで変化無く維持されている。
専門家らは、金正恩委員長がこれまでとは違い、今後は米国に振り回されないとの意思を見せるため、連日経済行脚を続けていると分析している。
翻訳︰水野卓