IMF・ラガルド氏の警告「アジア新興国にも通貨ショック可能性」
IMF・ラガルド氏の警告「アジア新興国にも通貨ショック可能性」
国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、トルコの通貨不安がまだ新興国にまで広がっていないものの、米中の貿易戦争が激化すると両国だけでなくアジア近隣諸国にも大きな衝撃を与える可能性があると警告した。
■新興国への衝撃懸念
ラガルド氏は英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、「IMFは現時点で一部の国で起こっている資本流出現象がまだ他の国に広まっていないと把握している。しかし、このような状況は急激に変わる可能性がある」と懸念を表明した。
また同氏は、「新興国はすでにドル高などで困難に直面している。さらに米中貿易戦争が浮上し、(新興国に)”衝撃”になりうる」とし「今回の危機がアルゼンチンとトルコを超えて、新興国全体に拡散する可能性がある」と悲観的な見解を示した。
ラガルド氏は、新興国が危機に陥る主な要因として貿易戦争を挙げつつ、「貿易(戦争)へのリスクが現実化される前に、不確実性と信頼喪失がすでに市場全体に拡散している」と語った。
実際に貿易戦争を始めたトランプ米大統領は近いうちに2000億ドル規模の中国からの輸入製品に関税を賦課する予定。これに対抗し、中国は報復関税を準備中だが、トランプ大統領は中国の報復に備え、追加で2670億ドル規模の中国製品に対する追加関税も発動することができると警告している状況だ。
米国と中国の瀬戸際戦術は、ドル高で売りの流れが押し寄せてきた新興国の通貨に追加の下方圧力として作用され、新興国がドル建ての債務を返済できるかという懸念につながっている。「ドル高→貿易戦争に伴う成長鈍化への懸念→新興国の通貨安→通貨安に伴う債務不履行」という負の連鎖になる模様だ。
■米国の低所得層も打撃
まだ危機はアルゼンチンとトルコにとどまっている。しかし、南アフリカ共和国、インドネシア、ブラジルなどでも資本流出が確認され、危機の拡散に懸念が高まっている。
ラガルド氏は、「米中の関税引き上げが中国の経済成長率に相当な衝撃を与えている」と予想しつつ、「アジア近隣諸国に危機の引き金になる可能性がある」と警告した。その理由として、中国と絡み合っている統合されたサプライチェーンを挙げた。
同氏は「関税賦課対象となる輸入品目が大幅に拡大し、輸入品の価格があがると、これによって最も大きな苦痛を受けるのは低所得層だ」とし「米国も貿易戦争の衝撃から逃れることはできない」と語った。
ラガルド氏は、「交易(慣行)が改善されなければならないということは間違いないが、決して脅威されてはならない成長のエンジンでもある」とし「交易は”マイナス”ではなく、”プラス”だ」と強調した。
info@fnnews.jp
Copyright © The financial news japan. All rights reserved.
ファイナンシャルニュースジャパン