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秋の電力「タイムセール」広がる背景 太陽光発電の一時停止が頻発

秋の昼間における電力の「タイムセール」が全国で広がりを見せている。太陽光発電の拡大により、春や秋にはエアコンなどの電力需要が減少し、晴天時に発電を一時的に停止せざるを得ない状況が増えていることが背景にある。このため、指定された時間帯に電力を消費することでポイントが還元される割引制度が九州地方などで広まり、この秋には東北地方でも導入が始まった。

電力業界では、気温が30度を下回り、冷房を使用せずに窓を開けて過ごせるような秋の日に、太陽光発電事業者に対して一時的な送電停止を求める「出力制御」が行われている。電力供給は需要に合わせて調整する必要があり、火力発電を停止しても電力が余る場合、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの発電量を制御する必要がある。

資源エネルギー庁によると、2023年度には全国で約19億キロワット時の再生可能エネルギーが出力制御され、これは約45万世帯分の年間消費電力に相当する。このため、再生エネルギーの有効活用が課題となっており、政府は余剰電力を他地域に送電できるよう、九州や本州を結ぶ送電網の強化を進める方針を示している。

電力会社各社は、秋や春の昼間に電力消費を増やすために、専用のスマートフォンアプリを利用して消費時間のシフトを促している。このシステムは、節電量に応じてポイントを還元する仕組みを応用したもので、電力会社が指定した時間帯において消費された電力量に応じてポイントが還元される。

特に太陽光発電が盛んな地域では、九州電力が2023年春にこのシステムを本格的に導入し、今年の春には中国電力や北陸電力もこれに追随した。東北電力もこの秋から1キロワット時あたり1円相当のポイント還元を開始し、消費者の関心を集めている。

九州電力では10月にポイント還元を1キロワット時あたり10円相当まで引き上げ、指定時間帯に調理や洗濯、電気自動車の充電、ヒートポンプ式給湯器「エコキュート」の利用時間をシフトする動きが見られるようになった。

ただし、家電の利用時間を特定の時間帯に移すには生活リズムを変える必要があるため、利用者には一定の負担も伴う。関西電力がこの秋に開始した家庭向けの利用促進策では、家電を遠隔操作できるスマートリモコン「ネイチャーリモ」を活用し、メーカーと共同で自動制御を行い、特定の時間帯に利用を移す実証実験が行われている。

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