貿易戦争その後…米投資家が銘柄乗り換え

貿易戦争その後…米投資家が銘柄乗り換え
米国証券市場の投資家らが最近高い配当金を支給する「安定株」に押し寄せている。ウォール・ストリート・ジャーナルは「これは9年間続く証券市場の上げ相場が新たな局面に入った事を示すシグナルだ」と19日報じた。
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、S&P500採用銘柄の中で9月に入り最も大きく上げた業種は、通信サービス、必須消費財、電気・ガス・水道などを供給する公共サービスである事が明らかになった。安全資産である債券に例えて、いわゆる「安定株」と呼ばれるこれらの株式は配当金を着実に支給するという長所があり、証券市場が変動性を見せたり下落する際に投資家らが選好するとされる。
安定株は潜在的な上昇幅が制限的だと認識されているため、市場が好況である時は一般的に株式市場の主要指数よりも上げ幅が少ない。
しかし9月に入り、情報サービス業は3.1%、必須消費財は1.5%、公共サービス業は1.5%とそれぞれ上昇。全体で0.1%増に留まったS&P500に比べて、ずば抜けて良い成績を上げている。
チョコレート製造で有名なハーシー(Hershey)などの一部企業は、配当金引き上げ効果で株価が上昇している。フィリップ・モリス(Philip Morris)とアルトリア・グループ(Altria Group)などの煙草製造業者は、米国食品医薬庁(FDA)庁長が色素が添加された電子煙草の禁止を考慮しているという話を材料に上昇した。
その一方、今年の米国株式市場を先導して来た大型テクノロジー株は9月に入り不振傾向。アップル、アマゾン、アルファベットはそれぞれ最低でも3%は下落し、フェイスブックは8%以上下げている。
ウォール・ストリート・ジャーナルはこの様な株式市場の主導業種変化について、「慎重な投資家らが大規模な市場変化の可能性に備える保護装置を求め始めている事を示している」と解説した。
まだ米国株式市場が下げ相場に転換する兆候を見せている訳ではない。S&P500は9月に足踏みをしているものの、今年全体では8.6%上げており、先月29日に記録した史上最高値から1%以内の差に留まっている。しかし多数のアナリストとトレーダーらは、米中貿易戦争の激化、テクノロジー業種の下げ幅拡大、新興国の混乱の先進国への転移など、何らかの事態が発生した場合に主要株式が下落する可能性を警戒している。
米国の大手資産運用会社ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ(State Street Global Advisors)のマイケル・アローニ主席投資ストラテジストは、「8月が終わって9月になり、よりディフェンシブな業種に向かって動く自然な傾向が現れた」と述べた。
現在の安定株強含みの流れを下支えしてくれるシグナルも見つかっている。今後30日間のS&P500指数の変動予想値を測定する、Cboe変動指数(VIX)は今週7.6%上昇した。VIXは株価が下落する際によく上昇するとされる。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの調査によると、投資家のポートフォリオの現金比重は約5.1%で、この18ヶ月で最高となっている。投資家は一般的に市場の状況が不確実な時に現金比重を高める。
一部では米国の連邦準備制度の金利引き上げ予測を根拠に、安定株の上昇傾向が続く可能性に疑問を呈している。来週には断行されると、幅広く予想されている連邦準備制度のもう一段階の金利引き上げは、米国債や株式市場で国債の代替物とみなされる安定株を圧迫するとの分析もみられる。連邦準備制度の金利引き上げ、そしてそれによる国債収益率上昇は、配当金依存度が高い株式の魅力を削ぐ事になる。
しかしウォール・ストリート・ジャーナルは、「証券市場の投資家を慎重にさせている、貿易戦争などの変数が消え去ると予測するアナリストは殆どいない」と指摘している。
翻訳:水野卓
info@fnnews.jp
Copyright © The financial news japan. All rights reserved.
ファイナンシャルニュースジャパン