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「最低賃金1500円実現の行方」企業間の賃上げ格差が拡大する可能性

2024年、日本の最低賃金は全国加重平均で1055円となり、前年比51円(5.1%)増加した。この引き上げ幅は2002年以降で最大だが、石破首相が掲げる「2020年代中の最低賃金1500円実現」に向けては、さらに毎年約7%の引き上げが必要だという厳しい現実がある。

■ 労使双方に広がる賃上げの必要性

2024年の春闘では、労働組合と経営側の交渉により、賃上げ率が約5%となり、約30年ぶりの高水準となった。日本の賃金水準が主要先進国の中で最低レベルであることや、物価高騰による生活の圧迫が、企業側にも賃上げの必要性を認識させている。特に人手不足が深刻化する中、優秀な人材を確保するためには待遇改善が不可欠との認識が広がっている。

■ 賃上げの現実:対応可能な企業と不可能な企業の二極化

東京商工リサーチが2024年12月に行った調査によると、「5年以内に最低賃金1500円を実現することは可能か」という問いに対し、回答した企業の48.4%が「不可能」とした。一方で、「すでに1500円以上を達成」とした企業は15.1%、「可能」と答えた企業は36.3%で、対応可能とする企業も一定数存在する。

不可能と答えた企業は、賃上げを可能にするための条件として「賃上げ促進税制の拡充」や「生産性向上のための投資への助成」などを挙げた。また、「低価格受注企業の市場退出促進」や「価格転嫁の進展」を求める声も多かった。

■ 経営の二極化が拡大する可能性

東京商工リサーチは、政策支援の遅れや生産性向上の取り組みが進まない場合、最低賃金引き上げをきっかけに、企業経営が二極化する可能性があると指摘している。賃上げに対応できる企業はさらに競争力を高める一方、対応が難しい企業は経営難に直面し、閉業や市場からの退出を余儀なくされるリスクが高まる。

最低賃金1500円の実現は、企業努力だけでなく、政府の支援や市場環境の整備が鍵を握る。日本経済の持続的な成長のためには、賃上げを可能とする包括的な政策が求められている。

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