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「有事の金」に異変…ロシアが金15トンを放出、財政圧迫で異例の売却

ウクライナ紛争の長期化に伴う財政赤字の拡大を受け、ロシアが外貨準備として保有する金を大量に売却している。これを受け、伝統的な「安全資産」とされる金の国際価格に下落圧力がかかるという、異例の事態が鮮明となっている。地政学リスクの高まりが価格を押し上げる通常の方程式に、ロシアによる「供給ショック」という新たな変数が加わった格好だ。

■ 2002年以来の最大規模、保有量は侵攻後最低に

世界黄金協会(WGC)が公開したロシア中央銀行の資料によると、ロシアは今年1〜2月の2ヶ月間で計15トンの金を売却した。これは同国として2002年以来、約24年ぶりの大規模な放出となる。

詳細な内訳は、1月に30万オンス、2月に20万オンスを処分しており、これにより金保有量は7430万オンスまで減少した。これはウクライナ侵攻直後の2022年3月以降で最低水準となる。モスクワ・タイムズは「これまでロシアの金取引は財務省と中央銀行間の内部移転が主だったが、公開市場での実売却に踏み切った点は極めて異例だ」と分析している。

■ 「最後の流動性」としての金売却

ロシアが金放出を急ぐ背景には、欧米諸国による経済制裁の影響がある。ロシアの海外資産約3000億ドルが凍結されている現状、金は事実上「最後の換金手段」となっている。

戦費調達や国債償還に向けた財政上の空白を埋めるため、ロシアは保有する金をドルや人民元などの流動性資産に換える必要に迫られている。ロシアの外貨準備高は約8090億ドルに達するが、そのうち金の構成比率は47%と極めて高い。この「金偏重」のポートフォリオが、市場に供給過剰の懸念を抱かせている。

■ 市場が注視する「3つの焦点」と今後の行方

今後の金価格の動向を占う上で、市場関係者が最も注視しているのは、紛争のさらなる長期化に伴うロシアの追加売却の有無である。戦費の増大により財政悪化が深刻化する中で、ロシアが保有する膨大な金準備をさらなる「現金化」の対象とするかどうかが、供給面における最大の懸念材料となっている。

また、ロシアと同様に西側諸国から経済制裁を受けている他の国々の動向も無視できない。外貨不足に直面した制裁対象国が、資産の流動性を確保するためにロシアに追随して金を市場に放出する動きを見せるかどうかが、中長期的な需給バランスを左右する重要な変数となるだろう。

さらに、これら供給側の要因に加え、米国の金融政策の行方が価格形成に決定的な役割を果たすとみられる。連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ転換の時期や、それに伴う米ドルの方向性は、利息を生まない資産である金の相対的な魅力を左右する。高金利の維持がドルの強さを支える中では、ロシアによる供給増と相まって、金価格の上値を抑える要因であり続ける可能性が高い。

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