中国「独身の日」売上記録更新も…悩み尽きないアリババ
中国「独身の日」売上記録更新も…悩み尽きないアリババ
‐売上規模増加率10%低下…急増した取引量は一時的な物か
‐ジャック・マー氏不在で来年以降の先行き不透明
中国最大の電子商取引企業アリババが毎年11月11日に開く割引セール、「独身の日」セールでの記録的な売上高にも、明と暗が交差している。歴代最高の売上高達成や100億元(約1633億円)スピード達成など、様々な新記録を達成した今回のセールに賛辞が送られる一方で、大型セール後の経済効果を見なければならないとの指摘も出ている。
■価格最優先の消費急増傾向
12日、中国のニュースサイト「澎湃新聞(The Paper)」によると、11日の24時間で「淘宝網(タオバオ)」をはじめとしたアリババの各種プラットフォームでは、総額2135億元(約3兆4800億円)相当の商品が取引され、歴代最高記録を更新した。これは昨年の売上金額1682億元(約2兆7400億円)より26.9%増加した数字となる。
ただしこの10年間で独身の日セールの売上規模が急成長を成し遂げて来ただけに、ここへ来て増加率鈍化の兆しも見え始めている。実際に今年の売上規模の増加率は、昨年の39.3%より10%以上低下した。
今年の売上記録は新記録に該当するものの、市場が予想していた数字には及ばなかったという事も注目すべき点だ。データ分析企業の「App Annie(アップアニー)」は、今年の独身の日セールの売上規模が320億ドル(約3兆6400億円)以上になると予想していた。
特に今年の独身の日セール期間に集中的に増加した取引量は、一時的な物であるとの分析も出ている。大幅割引商品が登場するセール期間に消費が急増する事は、可処分所得の余力が減っている消費者が節約志向にある事を意味する。このような見方が正しければ、通常期の消費が減る結果に至る可能性もある。
今年の独身の日セールの成果に対する評価は、米中貿易戦争などによる下向圧力を受けている中国の、内需経済力を図る尺度として考えられていたという点で注目されている。今年の独身の日セール期間の売上金額が大幅に増加した事で中産層の購買力が確認され、これに中国政府は勇気づけられている。しかし中国の第3四半期の経済成長率は6.5%に下がり、景気鈍化への憂慮が高まっている上に、中国国民の購買力を表す小売販売増加率は、今年4月以降は一桁の数値に留まるなど、客観的な経済指標は赤信号状態だ。これが、今年の独身の日セールの爆発的な取引量の裏側を見なければならないとの指摘が出ている理由だ。
■「ジャック・マー氏不在の独身の日」先行きは
今回のセールに助演として登場したアリババ会長ジャック・マー氏の姿も、今後の独身の日セールの先行きに重要なイシューとして浮き彫りになった。
ジャック・マー会長は10日晩に開かれた「独身の日セール前夜祭」のステージには上がらず、客席から観客らと共に、自らの後継者であるアリババのダニエル・チャン最高経営者(CEO)が主催するイベント進行の様子を見守っていた。ステージに直接上がり、イベントの雰囲気を支配した昨年の姿とは対象的だった。マー会長は今年のステージに直接上がる代わりに、アリババの宅配各部門の達人らと対決を繰り広げる映像を公開した。これは、毎月4万個の宅配ボックスを処理する職員、宅配配達員など各部門の達人らとの競争で、マー会長が連敗するという内容だった。
マー会長不在のアリババが、しっかりと機能するシステムを有しているというメッセージを送ったことになる。しかし、マー会長が来年9月にアリババ会長の座をダニエル・チャンCEOに譲ると突如発表した背景として、様々な憶測が飛び交っている。引退計画の日程を考えると、今年がアリババの成長を率いたマー会長と共に迎える、最後の独身の日セールになる公算が大きい。
翻訳:水野卓